専門委員会成果物

クレームは最も広く合理的な構成に解釈しなければならないと判断された事例

CAFC判決 2017年10月11日
Owens Corning v. Fast Felt Corp.

[経緯]

 Fast Felt Corp.は,自社が保有する屋根や建物の被覆材上に釘タブの材料を転写によって施工する方法及びその装置に関する特許8,137,757(’757特許)を侵害するとして,Owens Corning(O社)を 提訴した。これに対しO社は,’757特許のクレーム1,2,4,6及び7が1つの主引例と2つの副引例のそれぞれとの組み合わせから自明であるとしてIPRを申請した。
 PTABは,申請のあったクレームの全ては非自明であり’757特許を維持する決定を下した。
これを不服としてO社は,CAFCに控訴した。

[CAFCの判断]

 IPRでは,申請されたクレームの全てに含まれる“roofing or building cover material”の文言が限定的に解釈された結果,間違ったクレーム構成に基づいて自明性が評価されたかどうかが主な 争点となったが,CAFCはPTABの決定を退けた。
 具体的には,IPRにおいて“roofing or building cover material”の語は,明細書に記載された実施例に基づいて,アスファルト又はアスファルト混合物で覆われている或いは覆われるべき屋根又は建物の 被覆材に限定されて,発明の自明性が評価された。ここで,主引例には,合成屋根被覆材等の熱可塑性基材上にノズルを使用して材料を吐出することで釘タブを施工する方法が記載されており,副引例には加圧 ロールや転写ロールによって可撓性基材上に材料をコーティングする方法が記載されている。これらの引例の組合せにより,屋根被覆材上に釘タブを転写によって施工する構成が開示される。しかし,PTABは, ’757特許の“roofing or building cover material”がアスファルト材で覆われているものと限定して自明性を評価した結果,’757特許は屋根被覆材の種類が異なる点で引例の組合から得られる構成と 相違すると決定した。
 しかし,CAFCは,クレームは,明細書の記載に照らして最も広く合理的な構成に解釈しなければならないとして,“roofing or building cover material”の文言は,アスファルト等で覆われていない 被覆材も含み,PTABがこのような材料を除外するようにクレームを効果的に構築した点で間違いがあると指摘した上で,’757特許のクレーム1,2,4,6及び7は自明であるとする決定を下した。

(大須賀 皓也)

Copyright (C) Japan Intellectual Property Association All Rights Reserved.