専門委員会成果物

特許は十分なInventive Conceptが示されていないため特許適格性がないと認定された事例

CAFC判決 2017年10月16日
Secured Mail Solutions LLC v. Universal Wilde, Inc.

[経緯]

 Secured Mail Solutions LLC(S社)は,Universal Wilde, Inc.(U社)に対し,7件の特許に基づく特許侵害訴訟を提訴した。7件の特許は,送信者が郵便物の表面に,送信者情報,受信者情報, 郵送方法等の郵便情報を添付し,この郵便情報を通信する方法に関する特許で,郵便情報の表示形式に応じ,バーコード,QRコード,個別URLの3カテゴリに分類される。
 U社は,全特許が特許法101条の特許適格性を満たさないとして訴え却下の申立てを行った。地裁は,個別的,又は,結合的な観点からクレームを観て,荷印を活用した郵便物の情報を通信する抽象的なアイデアを 意味があるように限定していないとして,この申立てを認める決定を出した。S社は,この決定に対し,全特許が特許適格性を満たすとして,CAFCへ控訴した。

[CAFCの判断]

 CAFCは,全特許に対してAlice最高裁判決に基づく2ステップフレームワークを適用した。第1ステップでは,バーコード特許のクレームについて,コンピュータ,データベース,スキャナー等の特別な ルール又は詳細が記載されておらず,独特な郵便情報がどのように生成され,通常の郵便物に記載される個人名,返信先等の情報とどのように異なるのかが記載されていないため,抽象的なアイデアに相当すると 認定した。また,QRコード特許,個別URL特許についても同様に認定し,それらの特許のクレームは個別的な荷印を利用して,郵送物に関する情報を通信する抽象的なプロセスに相当すると認定した。
 次に,第2ステップでは,バーコード特許のクレームについて,送信者は送信者情報,受信者情報,郵送方法等の様々な情報を結合して郵便情報を生成しているが,バーコードの形式である必要がなく, どのようにその情報を生成するかが示されていないため,郵便情報に関する十分なinventive conceptが示されていないと認定した。また,QRコード特許,個別URL特許についても同様に認定し,クレームは 受信者によって画面に表示する郵便情報を単に郵便物に付すことを記載している,と認定した。さらに,郵便物に郵便情報を付したり,郵便物を通信したりすることを記載したクレーム構成は,郵便業者が 日常的に繰り返し行う動作である,と認定した。
 以上より,CAFCは全特許が特許適格性を満たさないとする地裁の判断を支持した。

(田中 成治)

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