専門委員会成果物

特許法112条パラグラフ6を充足しないとして優先権の利益を認めないと判断した事例

CAFC判決 2017年10月23日
Uniloc USA, Inc. et al. v. Sega Of America, Inc. et al.

[経緯]

 Sega Of America, Inc.はUniloc USA, Inc.(U社)が保有する,ソフトウェア登録システムに関する特許5,490,216(’216特許)に対して,全クレームを対象とする当事者系レビュー (Inter partes review(IPR))を請求した。ここに,’216特許は,オーストラリア仮出願(AU仮出願)を優先権基礎とするものである。
 IPRにおいて,特許審判部(PTAB)は,’216特許のクレームされた構成の一部についてAU仮出願に開示されていないとして優先権の利益を認めず,AU仮出願の出願日の後に公開された先行文献Schull (特許5,509,070)に基づき,新規性欠如を理由として’216特許の全クレームを無効と決定した。
 U社は,この決定を不服とし,AU仮出願に基づく優先権の利益を得るに当たっては,先の出願は特許法112条のパラグラフ1を充足するものであれば十分であり,同パラグラフ6を適用したPTABの認定には誤りが あるとの主張に基づき,CAFCに控訴した。

[CAFCの判断]

 CAFCは,PTABがした優先権の認定に誤りはなかったとして,PTABの決定を支持した。
 優先日の認定を行う際,X2Y Attenuators, LLC v. Int’l Trade Comm’n, 757 F.3d 1358, 1365 (Fed. Cir. 2014)判決に示されるように,まずPTABはクレームの文言解釈を行う必要がある,とCAFCは判断した。 争点となった’216特許クレーム中の文言“generating means”は,本事件とは別に提訴された過去の特許侵害訴訟において,ミーンズプラスファンクションクレームであると確認されており,特許法112条 パラグラフ6に基づき解釈されていた。PTABは,この文言解釈を採用してクレーム文言に対応する構成を決定していた。
 そのうえで,PTABは,Lockwood判決(Lockwood v. Am. Airlines, Inc., 107 F.3d 1565, 1572(Fed. Cir. 1997))に沿って優先権の認定を行い,争点となった文言に対応する構成は,AU仮出願には 記載されておらず,’216特許の出願時に追加された新規事項であると判断していた。CAFCは,これらのPTABの判断を支持した。
 CAFCは,’216特許を新規性欠如を理由として無効としたPTABの決定について全面的に支持した。

(金杉 勇一)

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