専門委員会成果物

システムの機能を表現する方法的記載を含むシステムクレームは不明確として特許無効とした地裁判決を棄却した事例

CAFC判決 2017年10月30日
MasterMine Software, Inc. v. Microsoft Corporation

[経緯]

 MasterMine Software, Inc.(MM社)は,顧客関係管理アプリケーションに関する2つの特許を所有しており,MM社はこの特許侵害を理由としてMicrosoft Corporation(MS社)を地裁に提訴した。 MS社は,当該特許のシステムクレームは不明確であるとして特許無効を主張した。地裁は,MS社の主張に同意し,IPXL判決(IPXL Holdings, L.L.C. v. Amazon. com, Inc. 430 F.3d 1377(Fed. Cir. 2005))を 引用して,1つのクレームに,不適切に2つの異なる主題(装置と方法)を記載したクレームは不明確であるとして,当該特許を無効とする判決を下した。MM社はこの判決を不服として控訴した。

[CAFCの判断]

 CAFCは,地裁の判断を誤りとして,地裁の判決を取り消した。
 CAFCは,IPXL判決は,1つのクレーム内で,装置と,装置を使用する方法との双方をクレームした場合,装置を製造する行為が侵害なのか,クレーム記載の方法で装置を使用する行為が侵害なのか, 不明確であると述べている一方,本事件における当該特許のクレームは,この問題を提起していない,とした。つまり,当該特許のクレームは,クレームされたシステムの能力を表現するために, 機能的文言を使用しているのであって,このようなシステムを製造・使用・販売等する行為が侵害であることは明らかである,とした。
 CAFCは,当該特許のシステムクレームは,当業者に妥当な確実性をもって発明の範囲を知らせているため,不明確で無効とした地裁の判決を棄却した。

(岩田 史子)

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