専門委員会成果物
TC Heartland最高裁判決前に提起されていた訴訟において，同最高裁判決後に為された裁判地移送の申し立てを却下した地裁判決を差し戻した事例
CAFC判決 2017年11月15日In re Micron Technology, Inc.
［経緯］
2016年６月，Harvard大学が，USP6,969,539およびUSP8,334,016の特許侵害を理由にMicron Technology, Inc.（Ｍ社）をマサチューセッツ地裁へ提訴した。2016年８月，Ｍ社は本提訴を却下するように申し立てたが，その際に，裁判地に関しては異議を申し立てなかった。
2017年５月，TC Heartland最高裁判決（TC Heartland LLC v. Kraft Food Group Brands LLC, 16-341 S.Ct. （2017））において，「特許訴訟の裁判地は，被告会社が�‥佻燭靴討い觸�（reside）， または��通常に確立したビジネスを日常行っている地でなければならない」との判断がなされた。
同最高裁判決の後，Ｍ社は「マサチューセッツ地裁は適切な裁判地ではない」と主張し，本事件の却下，又は裁判地の移送を申し立てた。
それに対し，同地裁は，2016年８月の最初の申請時に裁判地に関して異議を申請しなかったことを理由として，Ｍ社は裁判地防衛（venue defense）を放棄しているとその申し立てを却下した。
Ｍ社はこの判決を不服とし，CAFCに控訴した。
［CAFCの判断］
TC Heartland最高裁判決以降，地方裁判所によって，連邦民事訴訟規則12（g）（2）及び（h）（1）（A）に基づく放棄に関連する法令変更に関する判断が異なっている。これは，「被告が適切な時期に裁判地に異議を提起しなかった場合，被告はその問題への異議を放棄したと判断されることに対し，TC Heartland最高裁判決が，『放棄に対する例外を認める ように法を変えたもの』と判断する地裁と，そうではないと判断する地裁に分かれた」ことから起こったものである。
CAFCは「この事件は，異なる結果を生み出す訴訟が多発している一定の基本的かつ未解決の法律上の問題についての職務執行令状見直しを正当化する特別な事情を提示するものである。」と判断した。
この問題に対し，CAFCは「TC Heartland最高裁判決以前の最初の申請時には，Ｍ社（および第三者）によって現在提起されている同判決の法解釈に基づく裁判地防衛は主張可能では無かったのであるから， 同最高裁判決が関連する意味で法を変更している。従って，放棄規則の根拠となっている12（g）（2）及び（h）（1）（A）は適用できないと結論づける。」と判断し，本事件の裁判地の問題を再検討するように 地裁に差し戻した。
（平尾 拓樹）
