専門委員会成果物
再審査時の補正クレームが，原クレームと実質的に異なり中用権が適用される場合，再審査の発行日前の損害賠償を認めないと判断した事例
CAFC判決 2017年11月21日Presidio Components, Inc. v. American Technical Ceramics Corp.
［経緯］
Presidio Components, Inc.（Ｐ社）は，多層キャパシタに関する特許6,816,356（’356特許）を保有しており，2014年９月２日に，American Technical Ceramics Corp.（Ａ社）を特許侵害で地裁に提訴した。 当該訴訟の継続中，Ａ社が新たな先行文献に基づいて’356特許に対する査定系再審査を申請し，審査官が自明性等の拒絶理由を認めたため，Ｐ社は，請求項１を限定的減縮する補正を行った。USPTOは， その補正後のクレームで，再審査証明書を2015年12月８日付で発行した。地裁は，�．�レームは記載不備ではない，��特許侵害による逸失利益に基づく損害賠償を認める，�Ｇ羶海聾琉嫂�害と評決したが，拡大補償は認めない，�す欝彭�な差止を認める，�ィ措劼涼耆儻△鯒Г瓠� 再審査証明書発行以前の損害賠償は認められない，と判決を下した。これに対してＡ社は，� き◆きい亡悗垢訝郎曚糧酬茲鯢塢�として，CAFCに控訴した。
CAFCは，� き�，�イ砲弔い董っ郎曚糧獣任鮖抻�する一方，�◆きい砲弔い討話郎曚愃垢渓瓩紅獣任魏爾靴拭�
［CAFCの判断］
CAFCは，�イ砲弔い動焚爾陵佑鉾獣任魏爾靴拭Ｃ耆儻△亡悗垢�USC.252,307（b）によると，再審査後の特許権者は，原クレームおよび補正後のクレームが「実質的に同一」でない場合， 原クレームの発行日から再審査クレームの発行日までの間，侵害行為に対する損害を受ける権利を有しない。そして，「実質的に同一」か否かは，補正後のクレームの範囲が，Phillips v. AWH（Fed. Cir. 2005） （en banc）で明示されたクレーム分析に基づいて判断され，また，補正後のクレーム範囲が原クレームより狭いかどうかは，「原クレームを侵害するが，補正後のクレームを侵害しない製品またはプロセスが あるかどうか」で判断されるとした。本事例では，’356特許の原クレーム中の「フリンジ効果に基づくキャパシタ容量の計算方法」に関する特徴をＡ社製品が満たすとしてＡ社の特許侵害が認められた後，Ｐ社が査定系再審査でＡ社の 提出した類似特徴を備える先行文献に対して，「上記容量は実測定する」点で相違すると主張して補正後のクレームの特許性が認められたのであるから，補正後のクレームの範囲が原クレームと異なることは 明らかである。従って，補正後のクレームは，原クレームと実質的に異なるので，中用権の発生は妥当であると判示した。
（吉田 拓也）
