専門委員会成果物

PTABによるクレーム解釈を支持する一方で,新規性・非自明性ありとしたPTAB判断については説明不十分として棄却・差戻した事例

CAFC判決 2017年12月1日
Microsoft Corporation, and International Business Machines Corporation (IBM) v. Parallel Networks Licensing, LLC

[経緯]

 Parallel Networks Licensing, LLC(P社)は,動的なコンテンツを含むWebページの処理要求を管理するシステムに関する特許5,894,554と特許6,415,335の2件を,Microsoft Corporation(M社)とIBM (I社)が侵害しているとして地裁に提訴した。
 これに対して,M社は,当該特許2件は無効であるとして,各特許に対するIPRを2014年に提起した。同様に,I社も,当該特許2件は無効であるとして,各特許に対するIPRを2015年に提起した。 PTABはこれらのIPRを審理併合し,その結果,当該特許2件はいずれも新規性と非自明性を充足し有効であると判断した。
 これを不服として,M社とI社はCAFCに控訴した。

[CAFCの判断]

 CAFCにおける主な争点は,当該特許2件のクレーム解釈と,公知技術に対する特許性(新規性と非自明性)であった。
 クレーム解釈に関して,M社とI社は,クレーム中の“request”という語句をPTABは誤って解釈したと主張した。具体的には,PTABは“request”はコンテンツ中のWebページの更新毎に生じる要求と 解釈したのに対して,M社とI社は“request”はコンテンツ単位で生じる要求と主張した。これに関してCAFCは,処理時間とリソース不足を解決するとの課題に照らすと“request”はコンテンツ 全体としての単位ではなくWebページの更新単位での要求と解する方が適切であるとして,PTABのクレーム解釈を支持した。
 一方,特許性について,M社とI社は,当該特許2件は公知技術である“URL redirection”または“UNIX sockets package”により新規性がない,と主張した。これに関してCAFCは “URL redirection”に対して本願クレームは新規性があるとしたPTABの判断を支持し,M社とI社の主張を棄却した。一方で,“UNIX sockets package”に関しては,「PTABはこの公知技術 について言及していない」というM社とI社の主張を認め,M社とI社の主張が十分でない理由をPTABが示していないことから,新規性を充足しているというPTABの判断は破棄され差戻された。 この際,P社は「審理においてM社とI社は自ら上記主張を放棄した」と主張したが,CAFCはそのようには認識されないと判断し,この点についても差戻して審理することを示唆した。
 また,非自明性については,CAFCは「PTABは非自明性の分析において十分な判断根拠を説明していない」として,非自明性を充足しているというPTABの判断を破棄し差戻した。

(宇都宮 依子)

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