専門委員会成果物

新規性と自明性とを判断する基準は異なるとして,PTABのIPRにおける非自明の決定を棄却した事例

CAFC判決 2017年12月5日
CRFD RESEARCH, INC. v. MATAL, et al.

[経緯]

 PTABは,Iron Dome LLC(I社),DISH Network Corp.(D社),Hulu, LLC(H社)のそれぞれが別個に提出したCRFD RESEARCH, INC.(C社)の特許7,191,233(’233特許)に対するIPRを審理した。
’233特許は,あるデバイスから他のデバイスへの進行中のソフトウェアベースのセッションにおけるユーザ主導による転送のための方法およびシステムに関するものである。
 PTABは,’233特許に対する3件のIPRについて,それぞれ別個に審理を行い,3つの最終決定を行った(IPR2015-00055,IPR2015-00627,IPR2015-00259)。
 中でもPTABは,IPR2015-00259の最終決定において,H社は,異議のある請求項に対し,証拠の優越基準で特許性がないことを示していないとして,’233特許の争点の請求項において, 先行技術に対し新規性があり,かつ非自明であると結論づけた。H社はこれを不服として控訴した。

[CAFCの判断]

 CAFCは,PTABが,非自明の決定を,先行技術に対し異議のある請求項は新規性があるという決定を主な根拠とした点を問題とした。新規性と自明性との分析は異なるものであり, 自明性は根拠を成す事実認定に基づく法律の問題であるのに対し,新規性は事実の問題であるとした。そのため,先行技術の教示が新規性を否定するのに不十分だったとしても,同じ先行技術の教示が 自明性を認定するために使用されうる。従って,PTABの新規性に対する認定によって,自明性の判断を決定することは,法律の問題としては不十分であり,PTABは,自明性の判断において,法律的な間違いを 犯したと結論づけた。
 上記により,CAFCは,PTABのIPRにおける非自明の決定を棄却した。

(野村 亮介)

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