専門委員会成果物

米国特許訴訟において,弁護士費用の敗訴者負担が認められた事例

CAFC判決 2017年12月8日
Inventor Holdings, LLC v. Bed Bath & Beyond, Inc.

[経緯]

  2014年4月,Inventor Holdings, LLC(I社)はBed Bath & Beyond, Inc.(B社)に対して,POSシステムを用いて,遠隔で購入した商品の支払いを処理する方法に関する米国特許No.6,381,582 (’582特許)による侵害訴訟をデラウェア州連邦地裁に提起した。
 訴訟提起の後の2014年6月にAlice最高裁判決が下り,B社はAlice最高裁判決に基づき米国特許法101条の下,’582特許が無効である申立をした。
 地裁は,B社の特許無効の主張を認め,I社は地裁の判決に対して控訴したが,CAFCは地裁の判断を支持した。
また,勝訴したB社は,Alice最高裁判決時点で一度,I社が’582特許の特許適格性の再評価や訴訟の却下をすべきだったと主張し,米国特許法285条に基づき,I社による弁護士費用の負担を要求した。
 地裁は,Alice最高裁判決後(Post-Alice)においては,’582特許は特許適格性がなく,本事案が米国特許法285条に規定された「例外的場合」に該当するとし,B社の要求を認めた。
 I社は,地裁の判決を不服として控訴した。

[CAFCの判断]

 CAFCは,地裁が弁護士費用の敗訴者負担を認めたことに裁量権の濫用はなかったとして,地裁の判断を支持した。
 判決では,I社のAlice最高裁判決後も’582特許の特許適格性があったという主張に対して,CAFCはAlice最高裁判決によって,米国特許法101条は大きく変わり,Alice最高裁判決後,’582特許の 特許適格性がないことはMayo/Aliceの2段階テストを適用すれば容易にわかるとし,これを認めなかった。そして,I社がAlice最高裁判決後の新しい米国特許法101条の観点で’582特許を再評価する責任を怠ったためであると理由づけた。

(桑野 陽一郎)

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