専門委員会成果物

WIPOが,製品における「無形資産」の価値について初めて調査

 企業が製品の生産に使用するグローバルバリューチェーンを対象としたWIPOの調査によって,世界中で販売された製造物の価値の約3分の1が“無形資産”,例えばブランド,デザイン,技術, から来ていることが初めて数値で示された。
 この数値は,2014年における5兆9,000億ドルにのぼり,工業製品の総価値に対して,無形資産が建造物,機械やその他有形資産の2倍寄与することを示している。これは,世界経済の中で無形資産や それに関連する資産の保護に頻繁に利用される知的財産の役割がさらに高まっていることを示している。
 このWIPOの調査“World Intellectual Property Report 2017:Intangible Capital in Global Value Chains”(WIPR 2017)では,全ての生産活動を横断するグローバルバリューチェーンにおいて, どれくらいの収入が労力,有形資産,無形資産に発生するかを見ており,また,グローバルな経済的アウトプットの4分の1を代表する,スマートフォン,コーヒー及びソーラーパネルに焦点をあてた事例も 調査している。こうした経済的な洞察を提供するため,世界中の各国経済統計および国際貿易統計と企業データを調べた。
  “無形資産は,今日のグローバルバリューチェーンにおける企業の運命と運勢をますます決定してゆく。無形資産は,我々が購入する製品の概観,感性,機能や全般的な訴求の後ろに存在し, 市場での成功を決定している。”と,WIPOのフランシス・ガリ事務局長は言う。“知的財産は,企業が無形資産から競争優位を確保するための手段である”。
  WIPR 2017によるいくつかの知見は以下のとおり。
  • 無形資産は,2000年から2014年までに販売された製品の総価値において,平均30.4%を占めた。
  • 無形資産のシェアは,2000年の27.8%から2007年の31.9%まで上昇したが,その後は安定している。
  • 全体として,無形資産からの収入は,実質的に2000年から2014年にかけて75%増加し,2014年には5兆9,000億ドルに達した。
  • 食品,自動車,織物の3つの製品グループは,製造グローバルバリューチェーンにおける無形資産によって生み出されている部分が総収入のほぼ50%を占める。
  また,WIPR 2017には,スマートフォン,コーヒー,ソーラーパネルに焦点をあてた事例調査も記載されている。

(参考:WIPOプレスリリース)

http://www.wipo.int/pressroom/en/articles/2017/article_0012.html

(参照日:2017年11月30日)

(麦嶋 武士)

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