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〈中国〉懲罰的賠償の適用に関する司法解釈施行

　2021年３月３日に，裁判基準を明確にすることにより，各級法院への懲罰的賠償の正確な適用を指導し，知的財産権の重度な侵害行為を懲罰する趣旨で，最高人民法院による知的財産権侵害の民事事件の審理における懲罰的賠償の適用に関する司法解釈である法釈〔2021〕４号が公布され，同日から施行された。
　上記司法解釈は，全７条からなり，知的財産の民事事件における「懲罰的賠償の適用範囲」，「請求の内容と時期」，「故意と情状が深刻の認定」，「基礎額の計算」，「倍数の確定」などを具体的に規定した。

〈主なポイント〉

「故意」は「悪意」を含むことを明確化（司法解釈第１条）
　懲罰的損害賠償の適用に関する主観的条件は，専利法や民法典等では「故意」となっている一方，商標法，反不正当競争法では「悪意」となっている。実務上区別困難な「故意」と「悪意」について，商標法第63条第１項および反不正当競争法第17条第３項における「悪意」は「故意」の意味に含まれることを明確にした。
故意の認定について（司法解釈第３条）
　侵害された知的財産権の類型，権利状態，関連製品の知名度，被告と原告又は利害関係者との間の関係等を総合的に考慮しつつ，故意を有するとの初歩的な認定について以下の６つの例を示した。
1. ①被告が原告又は利害関係者からの通知，警告を受けたにもかかわらず，権利侵害行為を引き続き実施した場合。
2. ②被告又はその法定代表者，管理者が原告又は利害関係者の法定代表者，管理者，実際の支配者である場合。
3. ③被告が原告又は利害関係者と労働，労務，協力，許諾，販売，代理，代表等の関係を有し，かつ侵害された知的財産権に接触したことがある場合。
4. ④被告が原告又は利害関係者と業務上のやり取りがあるか又は契約の締結等のために交渉したことがあり，かつ侵害された知的財産権に接触したことがある場合。
5. ⑤被告が海賊版，登録商標詐称行為を実施した場合。
6. ⑥その他故意と認定できる場合。
侵害の情状が深刻であることの認定基準（司法解釈第４条）
　情状が深刻であることは懲罰的賠償の構成要件の一つである。情状が深刻である典型例として以下７つの例を挙げている。
1. ①侵害によって行政処罰もしくは裁判で責任を負った後に，さらに同一もしくは類似の侵害行為を実施した場合
2. ②知的財産権の侵害を業とする場合
3. ③権利侵害の証拠の偽造，損壊，隠匿をした場合
4. ④保全の裁定の履行を拒んだ場合
5. ⑤権利侵害による獲得利益もしくは権利侵害による被害額が巨大である場合
6. ⑥権利侵害行為が国家の安全，公共利益もしくは人の健康に損害を与える場合
7. ⑦情状が深刻であるその他の場合
懲罰的賠償の算定方法を明確化した。（司法解釈第５条）　法律によって，算定の優先順序の規定の有無，懲罰的な賠償に合理的な支出を含むか否か等が異なっている。そのため，司法解釈第５条に「法律に別途規定がある場合はそれに従う」と規定し，各案件はそれぞれ対応の法律が適用されることとした。

〈参考〉中国最高人民法院
http://www.court.gov.cn/fabu-xiangqing-288861.html

※その他参考
日本貿易振興機構　ホームページ
https://www.jetro.go.jp/world/asia/cn/ip/law/interpret

（URL参照日は全て2021年５月25日）

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