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〈中国〉「重大な専利権侵害紛争の行政裁決弁法」に関する公告

 2020年10月17日に公表され,2021年6月1日から施行されている第四次改正専利法には,行政による紛争処理解決に関連する70条が含まれている。中国で専利権侵害が生じて紛争処理を求める場合,人民法院に提訴する司法ルートと,地方の各地に存在する専利業務管理部門に差し止めを求める行政ルートが存在する。行政ルートは,司法ルートと比較して,紛争処理のスピードが速い点,裁判所費用が発生せず,前述のとおり紛争解決までの期間が短いことから弁護士費用を抑制できるという点が利点として挙げられる。
 今回の改正により,全国的に重大な影響を有する専利権侵害紛争については,国務院専利行政部門(国家知識産権局)に対しても紛争処理請求を行うことができる旨が70条で規定された。そして,2021年6月1日に専利紛争行政裁決事件を処理するための「重大な専利権侵害紛争の行政裁決弁法」に関する公告がなされ,同日から,国家知識産権局は,重大な専利侵害紛争行政裁決事件を正式に受理し,受理された業務は同法の関連規定に従って執行されることとなった。以下に,同法で規定されている主な事項を説明する。
  1. 「重大な影響のある案件」に該当する場合(同法3条)として,以下が規定された。
    1. (1)重大な公共の利益に関わる場合
    2. (2)業界の発展に著しく影響する場合
    3. (3)省級行政区域を跨ぐ重大事件に該当する場合
    4. (4)重大な影響を及ぼすおそれのあるその他の専利権侵害紛争に該当する場合
     なお,重大な専利権侵害紛争に対する行政裁決を請求するには,これらの状況に合致する証明書を提出する必要がある(同法5条)。
  2. 被請求人の答弁書の提出期間(同法10条)
     被請求人は,請求書及びその添付書類の副本を受領した日から15日以内に答弁書を提出することが求められる。
  3. 紛争処理の期間(同法22条)
     「国務院専利行政部門は,立件日から3か月以内に処理決定を下さなければならない」旨が規定され,短期で紛争解決をすることが明記された。
  4. 国家知識産権局による証拠収集(同法12条)
     当事者が客観的な事由により収集できない証拠については,初歩的な証拠及び理由を提出し,国家知識産権局の調査又は検査を申請することができる。

(稲葉 佳之)

(参考ウェブサイト)

日本貿易振興機構 ホームページ
https://www.jetro.go.jp/world/asia/cn/ip/law/section.html

(参照日:2021年7月2日)

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