外国特許ニュース

タイ，ウズベキスタン，トルクメニスタン編～US Special 301条　監視国の状況

　2021年４月30日，米国通商代表部（USTR）から，US Special301条の最新レポートが発行されました１）。
　このSpecial301条レポートは，アメリカ合衆国が，知的財産権の保護状況や公平な市場アクセス状況などを調査し，警戒レベルを「優先国」，「優先監視国」，「監視国」の３段階に分けて，その状況を報告するもので，各国における知財保護状況などを読み取ることができます。
　今回，国際第４委員会では，「タイ，ウズベキスタン，トルクメニスタン編」と題し，2021年度版　Special301条において取り上げられた，これらの国について，2020年度版からの変化を中心に，知財視点から，概要を纏めました。

【総括】
　タイでは，模倣品・海賊版保護を押収し，オンラインで統計情報を公開したり，WIPOインターネット条約（WIPO Internet Treaties）２）への加盟準備を進めている点が評価されました。一方，模倣品・海賊版が容易に入手できることなどが懸念され，2021年度版でも，「監視国」が維持されています。
　ウズベキスタンでは，WIPOインターネット条約への加盟などが評価されました。一方，ソフトウェアの使用，著作権の法的枠組みなどに改善の余地があるとして，2021年度版でも，「監視国」が維持されています。
　トルクメニスタンでは，ソフトウェアの使用，著作権保護の法的枠組みなどに改善の余地があるとして，2021年度版でも，「監視国」が維持されています。

タイ
【米国からの主な指摘事項】
1. ①模倣品・著作権違反（海賊版）について
  　模倣品や海賊版が，現物市場でも，オンラインでも，引き続き入手できる点を指摘されています。さらに，技術的保護措置の例外が過度に広いこと，不正なビデオカメラ使用に対する強制措置の手続上の障害，無許可の著作権管理団体など，米国や他の外国政府などから指摘された懸念に対して，著作権法を改正して，対処するよう要請しています。また無許可コンテンツのストリーミングなどオンライン著作権侵害の問題に対処することを奨励しています。
2. ②ソフトウェアの使用について
  　官民両方での無許可ソフトウェアの継続的な使用が懸念点として指摘されています。
3. ③医薬品／農薬の販売承認データについて
  　医薬品，および農薬の販売承認を得るために生成された非公開のテストまたはその他のデータの不正な商業利用，および不正な開示からデータを保護するために有効なシステムを提供することを引き続き奨励しています。
【米国からの肯定的なコメント】
　タイでは，引き続き模倣品や海賊版を押収し，執行統計をオンラインで公開しています。さらに，特許登録プロセスを合理化し，特許のバックログと保留を削減し，ハーグ協定への加入準備のために，特許法を改正中であることに言及しています。また，著作権法を改正し，世界知的所有権機関（WIPO）のインターネット条約への加盟に備えていることにも言及しています。
ウズベキスタン
【米国からの主な指摘事項】
1. ①ソフトウェアの使用について
  　大統領令や法規則による，ライセンスされたソフトウェアの使用の義務化が必要であると指摘されています。
2. ②知財制度（条約批准含む）について
  　外国の録音物保護およびWIPOインターネット条約の実施など，著作権の法的枠組みを引き続き改善するよう奨励しています。
3. ③エンフォースメント体制について
  　国境での水際対策を行うために税関職員に職権を与えること，および行政機関や執行機関への人員の割り当てについて，改善が必要であると指摘されています。
【米国からの肯定的なコメント】
　冒頭で挙げた評価のほか，中央アジア知的財産作業部会への支援と参加，ならびに知的財産庁による知的財産制度の改善に向けた３カ年計画の策定活動を含め知的財産に対する高いレベルの政治的関心が高まっていることなどに言及しています。
トルクメニスタン
【米国からの主な指摘事項】
1. ①模倣品・海賊版について
  　模倣品や海賊版が主要都市で広く出回ったままであると指摘しています。
2. ②ソフトウェアの使用について
  　大統領令や法規則による，ライセンスされたソフトウェアの使用の義務化が必要であると指摘されています。
3. ③知財制度（条約批准含む）について
  　外国の録音物に対する著作権保護およびWIPOインターネット条約への加盟および実施など，著作権保護の法的枠組みを整備する必要があると指摘しています。また，国境での水際対策を行うために税関職員に対する職権の付与および執行手続きの改善を含む，立法上の知的財産改革を実施するよう引き続き奨励しています。

監視ランク	監視国	監視国	監視国
国	タイ	ウズベキスタン	トルクメニスタン
国
前年度との比較	変化なし（監視国維持）	変化なし（監視国維持）	変化なし（監視国維持）
評価する点	模倣品や海賊版を押収し，執行統計をオンラインで公開特許法・著作権法の改正準備，審査官の増員，ハーグ協定・WIPOインターネット条約への加盟準備	著作権制度の改善（WIPOインターネット条約への加盟）米国・中央アジア貿易投資枠組み協定（TIFA）に基づく知的財産作業部会への支援及び参加，並びに知的財産庁による知的財産制度の改善に向けた３カ年計画の策定活動	なし
主な懸念点	模倣品や海賊版の商品の現物市場またはオンラインでの入手が引き続き可能なこと係属中の医薬品特許出願のバックログ官民両方での無許可ソフトウェアの継続的な使用長い民間IP執行手続き低い民間損害映画の含量割当制限を認める法律	ソフトウェア保護の仕組みエンフォースメントの体制強化"	模倣品や海賊版が広く入手可能ソフトウェア保護の仕組み外国の録音物に対する著作権保護の法整備状況（WIPOインターネット条約への未加盟を含む）
主な奨励点（改善余地あり）	デバイスとアプリケーションによるオンライン著作権侵害の問題への対処医薬品および農薬製品の販売承認を得るために生成された非公開のテストまたはその他のデータの不正な商業利用，および不正な開示から保護するための効果的なシステムの提供	著作権の法的枠組みの改善（外国の録音物の保護及びWIPOインターネット条約の実施を含む）	立法上のIP改革（エンフォースメントの体制強化）
2020年からの変化	変化なし	知的財産庁による知的財産制度を改善するための３カ年計画策定に向けた活動を評価した点	変化なし

注　記

https://ustr.gov/sites/default/files/files/reports/2021/2021%20Special%20301%20Report%20（final）.pdf
「著作権に関するWIPO条約（WCT）」および「実演およびレコードに関するWIPO条約（WPPT）」による，著作権および著作隣接権保護の枠組みの総称

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