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WIPO指標〜タイ,ベトナム,フィリピン編

 世界知的所有権機関(WIPO)から,2021年10月に「World Intellectual Property Indicators2021」(WIPO指標2021と称する。)が発行されました1),2)。
 このWIPO指標2021は,WIPOが特許,実用新案,商標,意匠,微生物,植物品種保護,地理的表示等の分野における2020年の統計をまとめて報告したもので,各国における最新知財動向を読み取ることができます。
 今回,国際第4委員会では,タイ,ベトナム,フィリピンを取り上げ,WIPO指標2021に基づいて各国知財(主に特許,実用新案)動向の概要を纏めました。

【総括】
 COVID-19の影響か,タイ,フィリピンでは,2020年には特許出願件数が前年比で減少に転じている一方で,ベトナムでは特許出願件数が増加しています。
 3カ国とも,日本での審査結果を用いたPPH申請件数が多く,日本企業の積極的なPPH制度の活用がうかがえます。

【国別】

  1. タイ
     2020年 特許出願件数は,7,525件であり,COVID-19の影響か前年比で減少となった一方で,近年,内国出願人による実用新案出願件数がコンスタントに増加しています。
     また,他の2カ国と比べると,現地特許庁へのPCT出願件数が多く,その内訳は光学メーカー,石油化学メーカーからの出願が多い傾向です。
     特許審査において,査定が出るまでの期間は平均60.0月でした。
  2. ベトナム
     2020年 特許出願件数は,7,695件であり,前年比で特許出願件数が増加しています。また,他の2カ国と比べて実用新案出願における外国出願人の割合が高く,外国出願人が積極的に実用新案制度を利用していることがうかがえます。
     特許審査において,査定が出るまでの期間は平均52.6月でした。
  3. フィリピン
     COVID-19の影響か2020年の特許出願件数は,3,993件であり,前年比で減少となっています。近年,内国出願人による実用新案出願件数が急激に増加していましたが,2020年は減少に転じています。
     フィリピンへのPPH申請は,米国での審査結果を用いた申請件数が最も多い結果となっています。
     特許審査において,査定が出るまでの期間が平均24.9月であり,他の2カ国と較べると,短期間で登録になっています。

 国際第4委員会では,中東,ASEAN,インドを中心に,新たな兆しに関するニュースなどを順次お届けする予定です。今後ともよろしくお願い致します。

表1 WIPO指標2021におけるタイ、ベトナム、フィリピンの知財動向概要

注 記
1) 「World Intellectual Property Indicators 2021」
https://www.wipo.int/edocs/pubdocs/en/wipo_pub_941_2021.pdf

2) Statistical Country Profiles(WIPOサイト内)
https://www.wipo.int/ipstats/en/statistics/country_profile/

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