外国特許ニュース

〈中国〉「産学研協力における知的財産関連条項手引(試行)」の公示

 中国国家知識産権局,教育部,科技部は,2021年10月18日に「産学研協力における知的財産関連条項手引(試行)」(产学研合作协议知识产权相关条款制定指引(试行))を公示した(制定日は10月8日)。
 本手引の公式解説によれば,中国における大学の特許の技術移転・活用が進まない原因として,契約上不明確な点があることによる隠れたリスクがあることが挙げられており,過去10年間の大学の知財関連契約紛争の主な原因として,特許権の譲渡,職務発明の奨励,特許ライセンス,営業秘密等に関する条項の不明確性に起因するとしている。本手引は,産学連携における知財契約プロセスにおける指導ガイドラインとなる,としている。
 本手引の全体構成としては,使用方法の説明,共通条項のほか,技術的成果に関する知財権の帰属に関連する個別条項から成る。
 共通条項において特徴的な点として,守秘義務と適用除外が定められている。守秘義務については,原則として相手側当事者の秘密情報の開示や使用はしないものとしつつ,外国で特許を出願する際の中国の秘密保持審査については厳守するものとされている。また,適用除外については,法律或いは関連する規制当局や上級管理部門から開示を求められた場合には,情報を開示しても守秘義務に違反したことにはならないとしている。また,この場合には開示に先立ち速やかに開示内容等を相手方に書面で通知すべきことを定めている。
 個別条項においては,(1)大学・研究機関に知的財産権を帰属させる場合,(2)企業に知的財産権を帰属させる場合,(3)双方で全て共有,又は一部を共有し一部を各人帰属させる場合,について定めている。
 今回の契約書ひな形は,政府が発表したものとして今後の産学連携における契約書に広く適用されるものとなることが予想される。
 日本企業においても,中国の大学・研究機関と連携して委託開発や共同開発を行う機会が多々あり,本手引の規定を提示される可能性があるため,あらかじめ目を通しておくことが推奨される。

<参考> 中国国家知識産権局

<その他参考>
JETRO 知的財産情報『中国政府,産学連携における知的財産関連条項の契約書ひな形を発表』
https://www.jetro.go.jp/ext_library/1/world/asia/cn/ip/pdf/ip_20211022.pdf
※日本語仮訳「産学研協力協定における知的財産権関連規定制定ガイドライン(試行)」も掲載。

(URL参照日は全て2021年12月8日)

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