外国特許ニュース

インドにおける新特許実施報告書(新Form27)提出に係るJIPA会員アンケートの調査結果と今後の取り組み

   インドにおける新特許実施報告書(新Form27)に関して,2020年規則改正による改訂後,最初の提出期限を迎えました。一方で,新Form27の運用にあたっては,実施時の価値の記載の仕方が分からない等,戸惑う声も寄せられています。そこで,国際第4委員会第2小委員会では,実際に新Form27の対応を終えて,具体的に困った点などの運用実態を把握し,今後の運用改善につなげることを目的として,日系企業の皆様に,新Form27に関するアンケート調査を実施しましたので,その結果と今後の取り組みをお知らせいたします。
  1. 背景  2020年改正特許規則の施行1)より,規則131(年次特許実施報告書の提出義務)及びForm27(実施報告書とその提出方法)が改正されました。 当該改正は,手続きの簡素化及び適正化を図ることを目的とするものでしたが,日本企業(権利者等)からは,実際の対応についての懸念の声が多数聞かれていました2)。そこで,今後のさらなる運用実態の改善を目的に,新Form27を用いた手続きにおいて,実際に困った点などを把握するため,アンケート調査を実施しましたので,その結果と今後の取り組みをお知らせいたします。
  2. アンケート調査方法  日本知的財産協会(JIPA)会員企業およびJETRO主催インドIPGに所属する企業に対してインドにおける新Form27の提出に関するアンケート調査を行い,日本企業の運用実態および困りごとを把握しました。 [アンケート概要] 調査方法:アンケート(Q1〜Q7) アンケート対象者:2021年度JIPA専門委員会に所属する企業(国際第1〜第4委員会,医薬・バイオテクノロジー委員会),JETRO主催インドIPGに所属する企業 実施期間:2021年12月10日〜12月24日 有効回答数:38社(自動車系4社,医薬・バイオ系4社,電気系13社,食品系1社,化学系12社,その他4社)
  3. 質問事項と回答結果

    Q1.みなさまの業種をお聞かせください。

        図1 業種別 ご回答者企業数(n=38)

    Q2.2020年改正特許規則に沿ったインド特許実施報告書(新Form27)を提出されましたか?

          図2 新Form27を提出した企業の割合

    Q3.(上記(Q2)で「はい」と答えた方)
    新Form27に基づいて手続きされた際の印象として,最も近いものをお選びください。

                図3 回答結果の内訳とその割合

    Q4.新Form27の提出にあたり,お困りになられた点はありましたか?

          図4 回答結果の内訳とその割合

    Q5.(上記(Q4)で困った点があったと答えた方)
    実際に,お困りになった点は,どのような点でしょうか?(複数回答可能)
                  図5 回答結果の内訳とその割合

    Q6.困った点に対して,実際には,どのような対応をされましたでしょうか?(開示できる範囲で構いません)

    主な回答
    【実施価値/収益の算定/記載方法 】

    • 現地事務所に確認しながら対応した(複数回答あり)。
    • 資料などを収集し,対応を検討した。
    【未実施の場合の書き方】
    • 現地事務所に確認しながら対応した(複数回答あり)。
    • 「インド特許庁から問い合わせがあった場合に回答を検討する」と記載した(複数回答あり)。
    • 未実施の理由を記載せずに提出した。
    • 収益の有無は正確に記載しつつ,価値算定は概算とした。
    【関連特許の記載の仕方】
    • 1件ずつ実施報告書を作成した。
    • まとめて1つのフォームで提出せずに,1件ずつ対応した。
    【その他】
    • 責任はライセンサーには及ばないと判断し,当社独自で報告した(複数回答あり)。
    • ライセンサーとライセンシーでレビューした。

    Q7.新Form27に関する課題認識や改善要望がありましたら,ご自由に記載ください(具体的に)。
    【実施価値/収益の算定/記載方法】

    • 記載内容の簡略化/報告義務の見直し
    • 実施報告対象の範囲の明確化
    • 具体的な算定方法の明確化
    • 営業秘密情報の除外
    【未実施の場合の書き方】
    • 記載内容に伴うリスクの明確化
    【関連特許の記載の仕方】
    • 特許権者が運用できるレベルでの基準の明確化
    • 提出システムの改善
    【全体的に内容が複雑】
    • ライセンサー/ライセンシーによる報告の在り方の明確化
    【その他】
    • 記載の仕方などに関するインド特許庁公式ガイドラインの公開
    • 共有特許権者ごとに報告できるよう改善
    • 記載項目の改善
    • さらなる特許権者の負担軽減に向けた改善/撤廃
  4. 考察
    • 新Form27を提出したと回答した企業24社のうち7社(29%)は,手続き面の負担が軽減されたと回答しているが,2社(8%)は,負担が増えたと回答している
    • さらに,新Form27を提出したと回答した企業24社のうち,19社(79%)が,手続きにあたって困った点があったと回答しており,具体的に,実施時の「価値」や収益の算定や実施していない場合の書き方など,新Form27の「書き方」に関する課題に集中している。
    • 特に,記載内容の簡略化や報告義務の見直しの改善を望む声が多い。
  5. 今後の取り組み  
    アンケートを通じて皆様から得られた課題認識については,日本企業の意見,改善要望として,ジェトロ・ニューデリー事務所,インドIPGと協働し,インド特許庁への提言活動につなげていく予定です。JIPAでは,関係機関と連携しながら,引き続き,新Form27の円滑な運用改善に向けた取り組みを進めて参ります。

注 記

  1. インド改正特許規則(2020)の施行について
    https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Ipnews/asia/2020/in/news_20201021.pdf
  2. インドにおける新特許実施報告書(新Form27)提出に係る留意点
    https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/in/ip/pdf/in_ipg_report_202106.pdf

(参照日:2022年1月28日)

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