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専門委員会成果物
シミュレーション構築にプログラミングに代えてグラフィックスを用いることは周知慣用技術の適用であり,抽象的アイデアを超えないと判断された事例
CAFC判決 2020年12月29日Simio, LLC v. FlexSim Software Products, Inc.
[経緯]
Simio, LLC(S社)は,オブジェクト指向型の工程シミュレーションに関する特許8,156,468(’468特許)を有しており,FlexSim Software Products, Inc.(F社)がその’468特許を侵害しているとして,地裁へ提訴した。
’468特許の独立クレーム1は,グラフィックスを用いてシミュレーションモデルを構築するための計算機を用いたシステム(computer-based system)であり,プログラミングの代わりにグラフィックスを用いることでオブジェクト指向型のシミュレーションを容易に構築できることを主旨とした発明である。
F社は,’468特許のクレームが特許法101条に基づく特許適格性を有さないとして訴状の却下を申立てた。
地裁は,①’468特許のクレームが,テキストを用いたコーディング作業をグラフィカル処理に置き換えるという数十年前から行われてきたプログラミングの技法に向けられており,抽象的アイデアである,②S社が,当該システムを,特許適格性を有する応用物に変換するに十分なコンピュータ機能の変更,ないしは創造的概念を証明できていない,として,F社による却下の申立てを認めた。
S社はCAFCに控訴した。
CAFCは,特許適格性を検討するにあたり,Alice判決の2ステップテストを採用した。まず,ステップ1の検討において,’468特許の利点は,プログラミングする代わりにグラフィックスを用いることでオブジェクト指向型シミュレーションを生成することであるが,’468特許で自認しているように,シミュレーション構築を容易にするためにグラフィックスを用いることは,1980年代及び1990年代から行われてきたことであり,その様な周知慣用な技法を適用することは,抽象的アイデアを超えないと判断した。
S社は,’468特許のクレーム1について,計算機を用いたシミュレーションの改善を提供し,計算機の能力向上をもたらすため,抽象的アイデアに向けられたものではない,と主張した。これに対しCAFCは,S社が,クレーム1がどうやって計算機の機能を向上させるのかを示していないとした。S社が主張する機能向上について,プログラミングに代えてグラフィックスを用いることによるシミュレーションモデル構築の高速化を主張するのみであり,抽象的アイデアの適用を本質とする能力向上は,クレーム発明を特許適格性がある計算機能力の向上とみなすには不十分である,と判示した。
次いでCAFCは,ステップ2の検討において,S社が,クレームの「executable-process」が新規であり創造的概念を付与すると主張するのに対し,たとえ当該文言が新規であったとしても反映される機能は周知慣用であり,クレームは依然として創造的概念を欠くとして,特許適格性を否定した。
’468特許の独立クレーム1は,グラフィックスを用いてシミュレーションモデルを構築するための計算機を用いたシステム(computer-based system)であり,プログラミングの代わりにグラフィックスを用いることでオブジェクト指向型のシミュレーションを容易に構築できることを主旨とした発明である。
F社は,’468特許のクレームが特許法101条に基づく特許適格性を有さないとして訴状の却下を申立てた。
地裁は,①’468特許のクレームが,テキストを用いたコーディング作業をグラフィカル処理に置き換えるという数十年前から行われてきたプログラミングの技法に向けられており,抽象的アイデアである,②S社が,当該システムを,特許適格性を有する応用物に変換するに十分なコンピュータ機能の変更,ないしは創造的概念を証明できていない,として,F社による却下の申立てを認めた。
S社はCAFCに控訴した。
[CAFCの判断]
CAFCは,地裁の判断を支持した。CAFCは,特許適格性を検討するにあたり,Alice判決の2ステップテストを採用した。まず,ステップ1の検討において,’468特許の利点は,プログラミングする代わりにグラフィックスを用いることでオブジェクト指向型シミュレーションを生成することであるが,’468特許で自認しているように,シミュレーション構築を容易にするためにグラフィックスを用いることは,1980年代及び1990年代から行われてきたことであり,その様な周知慣用な技法を適用することは,抽象的アイデアを超えないと判断した。
S社は,’468特許のクレーム1について,計算機を用いたシミュレーションの改善を提供し,計算機の能力向上をもたらすため,抽象的アイデアに向けられたものではない,と主張した。これに対しCAFCは,S社が,クレーム1がどうやって計算機の機能を向上させるのかを示していないとした。S社が主張する機能向上について,プログラミングに代えてグラフィックスを用いることによるシミュレーションモデル構築の高速化を主張するのみであり,抽象的アイデアの適用を本質とする能力向上は,クレーム発明を特許適格性がある計算機能力の向上とみなすには不十分である,と判示した。
次いでCAFCは,ステップ2の検討において,S社が,クレームの「executable-process」が新規であり創造的概念を付与すると主張するのに対し,たとえ当該文言が新規であったとしても反映される機能は周知慣用であり,クレームは依然として創造的概念を欠くとして,特許適格性を否定した。
(平本 宏一)
