専門委員会成果物

クレームが単に新規な主題を述べているだけでは特許適格性はないと判断された事例

CAFC判決 2021年2月8日
cxLoyalty, Inc. v. Maritz Holdings Inc.

[経緯]

 Maritz Holdings Inc.(M社)は,ポイントを利用したキャッシュベンダーとの仕入取引のシステムおよび方法に関する特許7,134,087(’087特許)を保有している。cxLoyalty, Inc.(C社)は,M社の’087特許に対してCBMレビューを申請した。PTABは,CBMレビューを開始し,当初クレームは特許法101条下の特許適格性を有しないが,代替クレームは特許適格性を有すると結論づけた。C社は代替クレームに関するPTABの決定に対し控訴し,M社は’087特許の当初クレームに関するPTABの決定に交差上訴した。  

[CAFCの判断]

 まず,当初クレームについて,CAFCは,Alice最高裁判決の2ステップテストを適用し,そのステップ1において,当初クレームは長年の商慣行に関連する情報の転送を対象としているため,抽象的なアイデアを対象とするクレームであると判断した。そして,当初クレームは一般的かつ従来のコンピュータ構成要素(すなわち,プロセッサー,GUI及びAPI)と抽象的なアイデアを実行するための機能を単に列挙しているに過ぎず,またGUIとAPIによる情報の伝達は先行技術でよく知られていたことから,「クレームの性質が特許適格性を有する応用に変換」されるのに十分な「発明概念」を含むかというステップ2の要件を満たさず,特許適格性がないと判断した。
 次に,当初クレームに「GUIがベンダー関連情報をベンダーシステムのフォーマットからGUIのフォーマットに変換するための命令を含む」という特徴が追加された代替クレームについて,M社は,該クレームが「良く理解された,ルーチン化された,慣習的な活動」ではないという専門家証言に基づき,特許適格性があると主張した。これに対し,CAFCは,クレームが,良く理解された,ルーチン化された,慣習的な活動を使用する抽象的なアイデアの応用を超える何かを反映するなら,特許適格性を有するだろう,とした上で,M社の専門家証言はクレームされた主題が全体として新規であるという意味においてのみ慣習的ではないと述べているに過ぎず,クレームが単に新規な主題を述べているだけでは特許適格性はないと判断した。

(前田 典子)

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