専門委員会成果物

外部証拠によるクレーム解釈に基づいたPTABの決定は誤りであると判断された事例

CAFC判決 2021年8月11日
Seabed Geosolutions (US) Inc. v. Magseis FF LLC

[経緯]

 Magseis FF LLC(M社)は,ジオフォンという地震受信器を利用した地震計に関する再発行特許45,268(’268特許)を保有しており,M社はSeabed Geosolutions (US) Inc.(S社)に対して’268特許の特許権侵害で地裁に提訴した。この提訴に対して,S社は’268特許の特許権は無効であるとIPRを申し立てした。IPRにおいて,PTABは提起された先行文献には’268特許のクレームで解釈されるジオフォンについて開示されていないと判断して,S社の申し立てを却下した。このPTABの決定に対して,S社はPTABの’268特許に対するクレーム解釈に誤りがあることを理由として,CAFCに控訴をした。  

[CAFCの判断]

 CAFCはPTABの’268特許に対するクレーム解釈には誤りがあると結論付け,PTABの決定を破棄し,差し戻した。
 ’268特許の各独立請求項には,“geophone internally fixed within housing”と記載されている。PTABはこのクレームの用語に対するクレーム解釈を発明当時の関連技術による外部証拠に基づいて行い,’268特許のクレーム範囲はジンバルに支持されていないジオフォンに限定されると判断した。
 しかしながら,原則的にクレーム解釈は,クレーム,明細書の記載,特許出願の審査経過を含む内部証拠に基づいて行われるべきであり,内部証拠からクレームの用語が明確である場合は外部証拠に依拠して異なる解釈をすべきではないと,CAFCはPTABのクレーム解釈方法について異論を唱えた。そして,内部証拠に基づくクレーム解釈によると,’268特許のクレームで記載される“fixed”は一般的な「固定」,「装着」等を示す用語であり,また副詞の“internally”や前置詞の“within”はジオフォンとハウジングの関係性を示す用語であることから,このクレーム用語はジオフォンのタイプを限定するわけではないと判断した。
 M社は反論として,明細書にはジンバルに支持されるジオフォンの記載がないことから,この範囲はクレーム解釈には含まれないと主張をした。しかし,明細書に記載がないことによりクレーム範囲を除外すると判断する根拠は乏しいこと,また明細書にはジンバル時計に関する開示がされていたことから,M社は発明時点でジンバルの存在を把握し,ジンバル有無の区別をしたいのであれば可能であったにも関わらずその記載をしていなかったことから,M社の主張は説得力に欠けるとして斥けた。

(青合 翔介)

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