専門委員会成果物

PTABはIPRで提出された証拠文献の認定の義務を負うとして,PTABの決定が誤りであると判断された事例

CAFC判決 2021年8月17日
Valve Corp. v. Ironburg Inventions Ltd.

[経緯]

 Valve Corp.(V社)は,Ironburg Inventions Ltd.(I社)のゲームコントローラーに関する特許9,289,688(’688特許)に対し,I社の先願である特許8,641,525(’525特許)の審査で引用されたBurns記事(Xboxに関するオンライン記事)を先行文献としてIPRを請求した。PTABは,IPRでV社が証拠として提出したBurns記事(証拠文献)と’525特許の包袋に記録されたBurns記事(包袋文献)の頁数が異なり,V社が証拠文献と包袋文献の同一性を示す証明を提出しなかったことから,証拠文献を’688特許の先行文献として認定しないとする決定をした。V社は,CAFCに控訴した。   

[CAFCの判断]

 CAFCは,PTABの決定を棄却した。
 CAFCは,証拠の事実認定は連邦証拠規則901(b)(3)に基づき通常なされることであり,V社は同一性を示す証明を提出する必要はないと判断した。これは,証拠文献(10項)と包袋文献(9項)を比較することは負荷となるものではなく,PTABは両文献の同一性を確認する義務を負っていたとの理由によるものである。またCAFCは,証拠文献が包袋文献に対して一部の画像が欠落することについて,欠落は文献のダウンロードや印刷方法によるものであって,同一性を否定する重大な事実には至らないとし,証拠文献と包袋文献が実質的に同一であると認定した。
 CAFCは,証拠文献と包袋文献が同一と認定したうえで更に,証拠文献は,’525特許の審査においてインターネットアーカイブサイトであるWayBack Machineにより’688特許の優先日より2年以上前に公的にアクセス可能であると認定した。これらの認定に対し出願人は反論していないことから,証拠文献は,’688特許に対し特許法102条(a)(1)に基づく先行文献であると判断した。

(益居 健介)

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