専門委員会成果物

IPR後の査定系再審査において,再審査を命じる前に,USPTOが特許性に関する「実質的な新たな質問」を見つけなければならないとして,査定系再審査を却下した事例

CAFC判決 2021年9月29日
IN RE:VIVINT, INC.

[経緯]

 Vivint, Inc.(V社)は,Alarm.com(A社)に対して,V社が保有する特許第6,717,513号(’513特許)を含む4件の特許を用いて,侵害訴訟を提訴した。
 A社は,’513特許に対して14件のIPRを請求し,PTABは,先の申し立てがIPRの開始基準である「請求が認められる合理的な可能性」を示すに至らなかったため,IPRの請求を拒否した。さらに,PTABは,残りのIPRの申し立てについては,好ましくない連続したIPRの請求であるとして請求を拒否した。
 その後,A社は,上記のIPRと本質的に同様の理由にて’513特許に対する査定系再審査を請求した。A社の請求は,上記のIPRと本質的に同様の理由であるにもかかわらず,USPTOは,A社が先行技術への言及が新しい観点から提示されたとの理由で,再審査を命じた。その後,再審査を担当した審査官は’513特許のすべてのクレームに対して最終的な拒絶を発行した。
 V社は,A社が悪質な連続したIPRの請求を行っており,USPTOは特許法325(d)に基づく査定系再審査を拒否する権限を持っているため,再審査を却下すべきとの主張を行い,CAFCに控訴した。    

[結論]

 CAFCは,V社の主張を認め,査定系再審査を却下した。
 CAFCは,USPTOが,A社の悪質な連続したIPRの請求を受け入れたとしても,査定系再審査を開始するための合理的な根拠を示していないと説明し,USPTOの再審査の決定は,USPTOの裁量を濫用し,恣意的かつ気まぐれな行動である,と判断した。さらに,CAFCは,特許法325(d)を根拠として,USPTOは,査定系再審査を命じる前に,「特許性に関する実質的な新たな質問」を見つけなければならない,と判断した。

(北田 正人)

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