専門委員会成果物

MPFクレームにおける“function-way-result”テストのうちwayが充分に立証しないとして非侵害と判断された事例

CAFC判決 2021年10月12日
TRAXCELL TECHNOLOGIES, LLC v. SPRINT COMMUNICATIONS COMPANY LP

[経緯]

 Traxcell Technologies, LLC(T社)は,特許8,977,284(’284特許)を侵害しているとして,Sprint Communications Company LP及びVerizon Wireless Personal Communications, LPを提訴した。この’284特許は,自己最適化ネットワーク技術に関するものである。
 地裁では,クレーム解釈の結果,T社が侵害に関する重要な事実を立証しなかったとして非侵害の略式判決(summary judgement)を行った。そこで,T社は地裁でのクレーム解釈に誤りがあるとしてCAFCに控訴した。  

[CAFCの判断]

 ’284特許のクレームには,一部にmeans-plus-function(MPF)限定が含まれる。このMPF限定に該当することを立証する際に,“function-way-result”テストが用いられる。このテストは,MPF限定における文言侵害は,侵害品に関連する構造物がクレームに記載された同一の機能を実行し,明細書中の構造物と同一又は同等である場合に成立する(448 F.3d 1324, 1333(Fed. Cir. 2006))。そのため,侵害品の構造物が特定されると,侵害品の構造物と明細書中の構造物とが実質的に同じ方法(“substantially the same way”)で同じ機能を実行し,実質的に同じ結果をもたらすことを示すことで,両者が同等であることを証明できる。
 ’284特許では,MPF限定に関して明細書から特定された構造物は詳細なアルゴリズムである。このアルゴリズムは機能を実現するために多数のステップが含まれる。しかし,T社は上位概念化されたレベルで議論したに過ぎず,アルゴリズムのうち少なくとも9ステップは何ら議論しなかった。つまり,原告は機能(function)と結果(results)に焦点を当てるだけで,その結果を導く方法(way)を充分に立証しなかったと述べ,地裁の判断を全面的に支持した。

(篠原 清)

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