専門委員会成果物

EPOとIEAはクリーンエネルギ技術の革新が急務であると発表

 4月27日,欧州特許庁(EPO)と国際エネルギ機関(IEA)は共同研究のレポート(“Patents and the energy transition:global trends in clean energy technology innovation”)を公表し,低炭素エネルギ技術に関連する全世界の特許数が2017-19年の期間に年平均3.3%増加したことを示した1)〜3)。
 特許数は,2014-16年を除いて過去20年間に亘り増加傾向にあるが,増加率は2000-13年の年平均+12.5%に比べると4分の1程度に留まっている。今日現在,CO2排出量を削減するために必要な技術の多くはプロトタイプ段階又は実証段階に過ぎず,IEAによれば,現在の気候目標を達成するためには,クリーンエネルギ技術の革新を大幅に加速する必要があり,IEAのFatih Birol事務局長は「2050年までにCO2排出量を実質ゼロにするために必要な削減量の約半分は,まだ市場に出ていない技術が必要なのかもしれない。」と述べた。
 レポートでは,国際特許出願ファミリの観点から評価された2000-19年までの低炭素エネルギ技術に関連する発明の主要な傾向が示されている。
 1つは,カテゴリが変化しているという傾向である。発明のカテゴリは“energy supply”(太陽光,風力,地熱,水力等の再生可能エネルギを含む低炭素エネルギ供給技術),“end-use applications”(運輸,建築,工業生産といった最終用途における,エネルギや低炭素電力のような燃料の切替を効率的に使用する技術),“enabling”(“energy supply”と“end-use applications”を横断する技術,若しくは,電池,水素,スマートグリッド,炭素回収といったより高いレベルのクリーンエネルギに対応するためにインフラを強化する技術)に大別されるが,“energy supply”は2012年以降減少し,2019年においては17%しか占めていない。一方,“end-use applications”は近年その数が安定しており,過去5年間において60%程度とその大部分を占めている。また,“enabling”は2017年以降最も力強く成長していることが示されている。
 もう1つは,電気自動車に関連する技術が急増しているという傾向である4)。過去10年に亘って電気自動車に関連する技術が急増しているのは,充電式リチウムイオン電池の技術的な進歩に依る。この傾向は,2000年以降の低炭素エネルギ技術に関連するトップ企業のランキングにも反映されている。このトップ企業には,自動車メーカ6社とそれらの主要な電池メーカ6社が含まれている。また,“end-use applications”の観点において,電気自動車の国際特許出願ファミリの数は,2011年時点の他の道路車両向けのクリーンエネルギに関する国際特許出願ファミリの数を上回ったことも示されている。

注 記

  1. EPO-IEA study highlights need to accelerate innovation in clean energy technologies to meet climate goals(2021年4月27日)
    https://www.epo.org/news-events/news/2021/20210427.html
  2. Read the key findings(2021年4月27日)
    https://documents.epo.org/projects/babylon/eponet.nsf/0/3A283646135744B9C12586BF00489B38/$FILE/patents_and_the_energy_transition_key_findings_en.pdf
  3. Read the full study(2021年4月27日)
    https://documents.epo.org/projects/babylon/eponet.nsf/0/3A283646135744B9C12586BF00489B38/$FILE/patents_and_the_energy_transition_study_en.pdf
  4. EPO-IEA joint study on electricity storage innovation(September 2020)
    http://documents.epo.org/projects/babylon/eponet.nsf/0/969395F58EB07213C12585E7002C7046/$FILE/battery_study_en.pdf
(参照日:2021年5月24日)    

(林 潤平)

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