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専門委員会成果物
ソーシャルメディアにおける知的財産権の侵害についてのEUIPOの調査報告
４月28日，欧州連合知的財産庁（EUIPO）はソーシャルメディアにおける知的財産権の侵害に関する調査報告書を公表した１），２）。
この調査は，発展するe-commerceにおいて，従来とは異なる技術や消費者行動が知的財産権の侵害にどのように影響しているのかを把握することを目的としており，特にFacebook，Instagram，Reddit，Twitter等のソーシャルメディアにおける侵害の実態を量的に明らかにすることを目指すものである。
調査は，2020年４月から９月までの６カ月間，６ヶ国７言語を対象として，ソーシャルメディア上で閲覧可能な会話のうち，知的財産権の侵害に関連するものに対し行われている。調査結果は３つの視点，１）侵害の疑いがある活動に関するソーシャルメディアの利用状況の全体像，２）ソーシャルメディアにおける製品やデジタルコンテンツの知的財産権の侵害の程度，３）ソーシャルメディアでの知的財産権侵害のビジネスモデルを把握するための指標，の観点でまとめられている。
１）に関し，ソーシャルメディア上での知的財産権の侵害の全体像を明らかにするために，390万件の会話が抽出された。その内容を分類したところ，物理的製品としてはおもちゃ，香水，化粧品についての会話が多く，デジタルコンテンツでは映画，音楽，ビデオゲームの会話が多いという結果になった。また，物理的な製品に関する会話の11％が偽造に関連する可能性があり，デジタルコンテンツに関する会話の35％が著作権侵害に関連している可能性があることが示されている。
物理的製品のうち，知的財産権侵害の発生数が最も多かったのは，衣類，履物，宝飾品であり，デジタルコンテンツでは電子書籍，テレビ番組，音楽で多いことが明らかにされている。
さらに，プラットフォーム，言語，適時性についての解析を行い，侵害のトレンドが調べられている。物理的製品に関しては，４つのプラットフォームの中でInstagramでの会話量が最も多く，時計，おもちゃ，香水，化粧品，宝飾品，履物の会話が多いのが特徴である。Twitterは衣服とおもちゃ，Redditは医薬品と帽子（headgear）についての会話が多かった。一方，Facebookは会話量が少なかったが，これはプラットフォーム側からの侵害に関する会話の削除が効果的に実施されていることによるものと推察されている。ただし，Facebookにおいては，侵害に関する会話が，公開されていないプライベートな会話（ダイレクトメッセージ等）の中で行われている可能性も排除できない。デジタルコンテンツの場合，Redditが映画やTV番組，Twitterが音楽や電子書籍についての会話が多い結果となっている。
言語についての分析では，侵害に関連する会話では英語が最も使われており，ポーランド語やスウェーデン語はあまり使われていないことが明らかになっている。一方，Instagram上では，フランス語，ドイツ語，イタリア語およびスペイン語での，物理的製品に関する会話が多かった。
なお，調査期間はCOVID-19禍の最中であったが，この期間の会話を過去３年のデータと比較すると，医薬品についての会話の増加や，ロックダウンの終了時期に衣料品の会話がピークに達するなど，COVID-19禍の影響が見られた。他方，デジタルコンテンツについての会話は漸進的な増加だった。
３）についての分析では，物理的製品の場合は，知的財産権侵害に関する会話は，主に宣伝や販売促進であり，偽造品の販売者は，新製品において確立されているビジネスモデルを真似ているものと考えられた。他方，デジタルコンテンツの場合は，ユーザー側が海賊版へのアクセス方法を探すための会話が多く，海賊版の提供者は受動的な役割にとどまっており，ユーザー側が情報を拡散する役割を担っているものと考えられている。
この調査では，ソーシャルメディアプラットフォームが物理的製品およびデジタルコンテンツの両方の知的財産権侵害のツールとなっていることを明らかにしている。そのような偽造品や海賊版の提供者が使用するアプローチは多様で常に変化しており，複数のプラットフォーム，言語，コンテンツタイプに広まっており，複雑化している，と結論付けている。
この調査は，発展するe-commerceにおいて，従来とは異なる技術や消費者行動が知的財産権の侵害にどのように影響しているのかを把握することを目的としており，特にFacebook，Instagram，Reddit，Twitter等のソーシャルメディアにおける侵害の実態を量的に明らかにすることを目指すものである。
調査は，2020年４月から９月までの６カ月間，６ヶ国７言語を対象として，ソーシャルメディア上で閲覧可能な会話のうち，知的財産権の侵害に関連するものに対し行われている。調査結果は３つの視点，１）侵害の疑いがある活動に関するソーシャルメディアの利用状況の全体像，２）ソーシャルメディアにおける製品やデジタルコンテンツの知的財産権の侵害の程度，３）ソーシャルメディアでの知的財産権侵害のビジネスモデルを把握するための指標，の観点でまとめられている。
１）に関し，ソーシャルメディア上での知的財産権の侵害の全体像を明らかにするために，390万件の会話が抽出された。その内容を分類したところ，物理的製品としてはおもちゃ，香水，化粧品についての会話が多く，デジタルコンテンツでは映画，音楽，ビデオゲームの会話が多いという結果になった。また，物理的な製品に関する会話の11％が偽造に関連する可能性があり，デジタルコンテンツに関する会話の35％が著作権侵害に関連している可能性があることが示されている。
物理的製品のうち，知的財産権侵害の発生数が最も多かったのは，衣類，履物，宝飾品であり，デジタルコンテンツでは電子書籍，テレビ番組，音楽で多いことが明らかにされている。
さらに，プラットフォーム，言語，適時性についての解析を行い，侵害のトレンドが調べられている。物理的製品に関しては，４つのプラットフォームの中でInstagramでの会話量が最も多く，時計，おもちゃ，香水，化粧品，宝飾品，履物の会話が多いのが特徴である。Twitterは衣服とおもちゃ，Redditは医薬品と帽子（headgear）についての会話が多かった。一方，Facebookは会話量が少なかったが，これはプラットフォーム側からの侵害に関する会話の削除が効果的に実施されていることによるものと推察されている。ただし，Facebookにおいては，侵害に関する会話が，公開されていないプライベートな会話（ダイレクトメッセージ等）の中で行われている可能性も排除できない。デジタルコンテンツの場合，Redditが映画やTV番組，Twitterが音楽や電子書籍についての会話が多い結果となっている。
言語についての分析では，侵害に関連する会話では英語が最も使われており，ポーランド語やスウェーデン語はあまり使われていないことが明らかになっている。一方，Instagram上では，フランス語，ドイツ語，イタリア語およびスペイン語での，物理的製品に関する会話が多かった。
なお，調査期間はCOVID-19禍の最中であったが，この期間の会話を過去３年のデータと比較すると，医薬品についての会話の増加や，ロックダウンの終了時期に衣料品の会話がピークに達するなど，COVID-19禍の影響が見られた。他方，デジタルコンテンツについての会話は漸進的な増加だった。
３）についての分析では，物理的製品の場合は，知的財産権侵害に関する会話は，主に宣伝や販売促進であり，偽造品の販売者は，新製品において確立されているビジネスモデルを真似ているものと考えられた。他方，デジタルコンテンツの場合は，ユーザー側が海賊版へのアクセス方法を探すための会話が多く，海賊版の提供者は受動的な役割にとどまっており，ユーザー側が情報を拡散する役割を担っているものと考えられている。
この調査では，ソーシャルメディアプラットフォームが物理的製品およびデジタルコンテンツの両方の知的財産権侵害のツールとなっていることを明らかにしている。そのような偽造品や海賊版の提供者が使用するアプローチは多様で常に変化しており，複数のプラットフォーム，言語，コンテンツタイプに広まっており，複雑化している，と結論付けている。
注 記
１）EUIPOプレスリリース（2021年４月28日）
https://euipo.europa.eu/ohimportal/en/news?p_p_id=csnews_WAR_csnewsportlet&p_p_lifecycle=0&p_p_state=normal&p_p_mode=view&journalId=8666248&journalRelatedId=manual/
（参照日：2021年５月28日）
（今井 周一郎）
