専門委員会成果物

欧州特許庁の年次レビュー2020は組織の急速な変革を反映

 欧州特許庁(EPO)は6月29日,年次レビュー20201)を発表した。動画を含むこの発表では,2020年はCOVID-19のパンデミックに伴う複数の課題に対応するため,急速な変革の年であったことを強調している。EPOは戦略計画20232)の中で,作業空間のデジタル化に向け,デジタル化のさらなる加速と組織の全階層を対象とした柔軟な取り組みを進めた。これらについては,戦略計画2023の5つの各目標(1.仕事に専念し,知識豊富でかつ協力的な組織の構築;2.EPOのITシステムの簡素化及び近代化;3.高品質の成果物及びサービスの効率的な提供;4.グローバルな影響を与える欧州特許システム及びネットワークの構築;5.長期的な持続可能性の確保)の報告の中で概説されている。この報告では,さらに,品質,環境の持続可能性,社会的側面,職員の雇用,IT,データ保護,及びコミュニケーション等のトピックスに関しても詳細に報告されている。
 EPOのAntónio Campinos長官は「職員の決意と創意工夫,世界中のパートナーとの緊密な協力,品質への新たな戦略的アプローチ,及び加速するデジタルトランスフォーメーションのおかげで,EPOは,パンデミックによってもたらされた課題への対処と,全ての利害関係者に対する卓越性の確約の維持の両方を対応することができた。」と述べている。
 年次レビュー2020は,欧州特許の需要が昨年とほぼ同等であったことを示している。EPOは合計180,250件の特許出願を受理したが,これは2019年より0.7%少ない結果となった3)。パンデミックの間の需要に応じるために,EPOは,元々2023年までに導入する予定であった技術をほんの数ヶ月で取り入れ,特許付与プロセスのデジタル化を加速し,テレワークをほぼすべての職員に拡大した。特許審査官の成果としては,調査,審査及び異議申立の処理件数が401,996件に達した。さらに,EPOは2020年に133,715件の欧州特許を公開しており,これは2019年と比較してマイナス3%となったが,目標の12万件をはるかに上回る結果となった。調査に要する平均時間はわずかに増加したものの,EPOの審査業務と異議申立業務の適時性は改善し続けている。    
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