専門委員会成果物

EPO study:特許にみる明日のプラスチック/リサイクル,循環デザイン,代替プラスチックにおける世界のイノベーショントレンド

 EPOは2021年10月,新しいEPO study1),2)を発表した。本調査からは,グローバルな観点から,欧州と米国がプラスチックのリサイクルと代替プラスチック技術のイノベーションをリードしていることが明らかになった。欧州と米国は,2010年から2019年の間にこれらの分野で世界の特許活動の各30%,合計で60%を占めた。
 この調査では,プラスチックのサーキュラー・エコノミー(循環経済)への移行を推進している2010年から2019年までのイノベーショントレンドの包括的な分析結果が示されている。また,2以上の特許庁に出願された“高価値発明”を表す国際特許ファミリー(IPFs)の数に基づいて分析を行っている。
 「プラスチックは経済にとって不可欠ですが,プラスチック汚染は世界中の生態系を脅かしています。」と,EPOのAntónio Campinos長官は述べた。「幸いなことに,イノベーションは完全循環モデルへの移行を可能にすることでこの課題に対処するのに役立ちます。」
 全リサイクル技術の中で,化学的および生物学的リサイクル方法は,2010-19年に9000 IPFsで,プラスチック廃棄物を新製品に変換するために現在最も一般的に使用されているソリューションである機械的リサイクル(4500 IPFs)の2倍であった。標準的な化学的方法(分解蒸留法や熱分解など)の特許は2014年にピークに達したが,生物学的方法(1500 IPFs)やプラスチックをモノマーにリサイクルする方法(2300 IPFs)などの新しい技術は,ポリマーを分解して新品同様のプラスチックを製造するという,新しい可能性を提供するものである。
 バイオプラスチックの発明の分野では,欧州のプラスチックの総需要の3%未満に留まるにもかかわらず,ヘルスケア業界が全体で圧倒的に多くの特許活動を行っている(2010-19年には19000 IPFs以上)。化粧品および洗剤業界において,バイオプラスチックのIPFsは従来のプラスチックのIPFsに対してより高い比率である。包装,エレクトロニクス,繊維もバイオプラスチックの革新に大きく貢献している。
 リサイクルを容易にする新しいプラスチック設計は,2010年以来,年平均10%の成長率で,近年指数関数的に発展した代替プラスチックの分野である。これらの技術は,航空宇宙,建設,輸送,風力タービン,マイクロエレクトロニクスに応用できる可能性がある。また,自己修復が可能な耐久性のあるプラスチック材料の新しい設計を可能にするアプローチである動的共有結合のイノベーションにより特許取得の急速な成長が推進されている。

注 記

  1. Patents for tomorrow’s plastics:Global innovation trends in recycling, circular design and alternative sources|October 2021
    http://documents.epo.org/projects/babylon/eponet.nsf/0/069F978FE569055EC125876F004FFBB1/$File/patents_for_tomorrows_plastics_study_en.pdf
  2. Key Findings
    http://documents.epo.org/projects/babylon/eponet.nsf/0/069F978FE569055EC125876F004FFBB1/$File/patents_for_tomorrows_plastics_study_key_findings_en.pdf

EPOニュース(2021年10月19日)
New EPO study:Europe and US are leading innovation in plastic recycling and alternative plastics globally, patent data shows
https://www.epo.org/news-events/news/2021/20211019.html

(参照日:2021年11月4日)    

(畠山 和久)

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