専門委員会成果物

欧州特許庁 口頭弁論のテレビ会議について,3分の2の利用者が肯定的に評価(1)

 2021年9月1日から30日までのユーザー調査の結果によると,ビデオ会議(VICO)による異議申し立ての口頭弁論は大多数のユーザーに評価されていることが分かった。2021年11月30日に公開された欧州特許庁(EPO)のレポート(2)にはこれまでの18ヵ月に及ぶパイロットプロジェクトに対する評価が含まれており,本レポートでは先週決定されたパンデミックの深刻化に基づくパイロットプロジェクトの延長を受けたEPOの今後の予定についても説明されている。
 最近行われたユーザー調査では,EPOの方針と実施に関する質問に対し,過去最大数の回答が寄せられた。回答者700名の内4分の3以上がVICOによる異議申し立ての口頭弁論に少なくとも一度は参加しており,回答者の内3分の2は,VICOによる異議申し立ての口頭弁論の実施に対して「良い」又は「非常に良い」と答えた。その後の質問に対する回答から,VICOによる口頭弁論に関してユーザーが思う良い点及び悪い点が明らかになり,悪い点よりも良い点の方が多い結果となった。
 一方で一部の利用者は,より良い非言語コミュニケーション(ボディランゲージ)を行うためにも口頭弁論はEPO敷地内において対面で行われるべきだと考えている。また,VICOでは新しいデジタルツール(仮想ホワイトボードなど)を使用して意見を述べるといった,さまざまなスタイルのプレゼンテーションが要求される。
 EPOのAntónio Campinos会長は次のように述べた。
 「これまでの18ヵ月に及ぶパイロットプロジェクトで多くのことを学ぶことができ,EPOの職員とすべての特許専門家の辛抱強さと柔軟性に感謝する。今回多数のフィードバックが寄せられたことにより,VICOでの口頭弁論により節約された時間,費用,及び排気量(環境への影響)を利用者の大多数が評価していることが明らかになった。VICOは,このようなタイムリーな司法制度の利用を可能にしただけに留まらず,EPOによる毎月数百件(約350件)もの異議申し立て口頭弁論の処理を可能とした。また,一般の傍聴者数は20倍にも倍増しており,VICOによる透明性の向上は思いもよらなかった効果である。回答によると,大半のユーザーにとってVICOは口頭弁論の形式として選択されるようになってきている。」
 またVICOではユーザーはより大きなサポートを享受できる。第一に,不測の問題が発生した場合にも,彼らの同僚やバックオフィスからのサポートを得ることができる。第二に,通訳者の利用が増加しているリモート通訳を介して(特にフランス語では,2019年の30.7%から2021年の35.4%に増加),より多くの通訳者にアクセスしサポートを受けることができる。第三に,口頭弁論中の技術的問題に迅速に対応するための専用のITサポートデスクがEPOから提供されており,さらに口頭弁論前のテスト通話機能も提供されている。最後に,EPOから提供される新たなeラーニング・モジュールでトレーニングを受けることができ,恩恵を受けることができる。2021年には,7,000人以上のユーザーがEPOにより提供されたさまざまなトレーニング・コースに参加したり,オンライン・トレーニングの資料を取得したりしている。

注 記

  1. EPOプレスリリース(2021年11月30日)
    Two thirds of users rate videoconferencing for oral proceedings in opposition positively
    https://www.epo.org/news-events/news/2021/20211130.html
  2. Pilot project for oral proceedings in opposition by videoconference
    https://documents.epo.org/projects/babylon/eponet.nsf/0/A4401E21213DC157C125879C00577126/$File/pilot_project_oral_proceedings_in_opposition_by_videoconference_report_november_2021_en.pdf

(参照日:2021年12月18日)    

(久田 亮太)

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