外国特許ニュース

〈中国〉中国がハーグ協定（1999年ジュネーブ改正協定）に加盟

　中国政府は，2022年２月５日に意匠の国際登録に関するハーグ協定の1999年ジュネーブ改正協定（以下，「ジュネーブ改正協定」という）の加入書を世界知的所有権機関（WIPO）国際事務局長に寄託した１），３）。このジュネーブ改正協定は2022年５月５日に中国において発効し，同日から意匠の国際登録出願（ハーグ出願）において中国を指定することが出来るようになる。
　ジュネーブ改正協定は，WIPO国際事務局が管理する意匠登録手続の簡素化と経費節減を目的とした国際条約であり，意匠について，一つの国際出願手続により国際登録簿に国際登録を受けることによって，複数の指定締約国における保護を一括で可能とするものである。
　日本は2015年にジュネーブ改正協定に加入し，現在，アメリカ，欧州，韓国を含む67の国および政府間機関が加盟しており，中国が68番目の締約国となる。また，中国は，ハーグ協定としては77番目の締約国となる。
　中国国家知識産権局（CNIPA）によると，中国の意匠登録出願は2020年が770,362件，2021年の速報値では78.6万件に達し，世界全体の50％以上を占めると言われている。中国のハーグ協定への加盟により，従来のパリルートでの中国意匠登録出願に加え，ハーグルートでの国際意匠登録出願を行うことにより，巨大市場である中国を含むジュネーブ改正協定の締約国での権利保護が簡易かつ安価な手段で出来るようになる。
　ハーグ協定の国際的な手続メカニズムが自国の国内要件に適合するように，締約国は一定の宣言をすることができる。ハーグ出願が中国専利法の要件を満たすように，中国の加入書にはいくつかの宣言が付されている２）。
　まず，「意匠の複製物又は特徴についての簡潔な説明の要件」についてのジュネーブ改正協定５条（２）（ｂ）（ⅱ）の宣言を行っている。2020年11月27日に公開された「専利法実施細則の改正案（意見公募稿）」４）で第11章として新設されたハーグ特別章の８条には「意匠国際出願の国際局の公開に設計の要点を含む説明書が含まれる場合，本細則第28条の規定に基づき簡単な説明が提出されたものと見做す。」と規定されていた。従って，ハーグ出願においても，中国意匠登録出願と同じように「意匠の簡単な説明」として，意匠に係る物品の名称，用途，設計要点，代表図の指定などを記載する必要があるものと思われる。
　また，「意匠の単一性」について，同13条（１）の宣言を行っている。ただし，前述の「専利法実施細則の改正案（意見公募稿）」のハーグ特別章の１条には「国務院専利行政部門は意匠国際出願を処理する条件と手順を本章の規定に準拠する。」と規定されている。従って，ハーグ出願においても，中国意匠登録出願と同じように類似意匠制度（類似する意匠は10個まで１つの出願に記載可能）が利用できるものと思われる。
　さらに中国は，意匠に関する実体審査を基本的には行わないいわゆる無審査主義を採用する国ではあるが，拒絶の通報期間を12か月とする宣言を行っている（共通規則18（１）（ｂ））。
　なお，WIPOによると，今回の中国のハーグ協定加盟の効力は，中国政府からの別段の通知があるまでは，香港とマカオには及ばないとのことである２）。
　前述の「専利法実施細則の改正案（意見公募稿）」において，ジュネーブ改正協定に基づく国際意匠登録に関して，国際意匠登録出願の定義，出願日，発効日の確定などの規定が設けられたが，本稿執筆時点ではまだ改正版は施行されていない。2022年５月５日のジュネーブ改正協定の中国における発効にともない，専利法実施細則および専利審査指南の改正版についても早期に施行されることが期待される。

＜参考＞ 　

WIPOホームページ
１）China Joins Two Key WIPO Treaties
　　https://www.wipo.int/pressroom/en/articles/2022/article_0001.html

２）China Joins the Hague System
　　https://www.wipo.int/hague/en/news/2022/news_0005.html

CNIPAホームページ
３）中国加入《工业品外观设计国际注册海牙协定》
　　https://www.cnipa.gov.cn/art/2022/2/9/art_53_173132.html

４）关于就《专利法实施细则修改建议（征求意见稿）》公开征求意见的通知
　　https://www.cnipa.gov.cn/art/2020/11/27/art_75_155294.html

（URL参照日は全て2022年３月13日）

（小林　英樹）

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