専門委員会成果物

技術的専門家の定義に基づく証言採用可否の一貫性が問われた事例

CAFC判決 2022年1月21日
Kyocera Senco Industrial Tools Inc., et al. v. International Trade Commission
Koki Holdings America Ltd., et al. v. International Trade Commission

[経緯]

 2017年,Kyocera Senco Industrial Tools Inc. (Kyocera社)はKoki Holdings America Ltd. (Koki社)が,特許を侵害する空圧式釘打機あるいは特許を侵害する方法を用いて製造された空圧式釘打機を輸入しており,19 U.S.C. § 1337(Section 337)に違反するとしてInternational Trade Commision(ITC)に申し立てた。
 審議の中で行政判事は,クレーム解釈の際,技術専門家の定義としてKoki社の定義を採用したが,それをKyocera社は争わなかった。その定義では,技術専門家は少なくとも2年のパワー釘打機の設計経験が必要であった。
 Kyocera社はプラット博士にクレーム解釈,有効性,文言侵害,均等論侵害における技術専門家として証言するよう依頼した。プラット博士は,エンジニアリングの博士号と,ファスナー駆動ツールの設計における豊富な経験を有していたが,技術専門家の定義にあるパワー釘打機の設計経験が不足していた。
 行政判事は,プラット博士が技術専門家の定義にある「2年のパワー釘打機の設計経験」を有していないとして,均等論侵害を論じる上で同氏証言の採用を除外した。一方,行政判事は,文言侵害の判断にはプラット博士の証言を採用した(判決文にはプラット博士の証言の採用理由は記載されていない)。
 Kyocera社及びKoki社はITCにおける判断を不服としてそれぞれ,上告した。  

[CAFCの判断]

 CAFCでは,証言の採用可否における争点以外にもクレームの文言解釈を含め5つの争点があったが,本稿では証言の採用可否について争われた点について記載する。
 Kyocera社は,プラット博士の証言は文言侵害で採用されたのだから,均等論侵害においても採用されるべきだと主張した。一方,Koki社は,プラット博士は技術専門家の定義を満たしておらず,同氏の証言は,文言侵害と均等論侵害のいずれにおいても採用されるべきではないと主張した。
 CAFCは,証言者が技術専門家として関連する知識が欠如していることは文言侵害についての証言であろうが,均等論侵害についての証言であろうが,等しく当てはまると述べた。そのうえで,「Kyocera社は,技術専門家の定義について争点として挙げていないため,プラット博士が技術専門家の定義を満たしていないことが確定する。よって,同氏の証言は,文言侵害と均等論侵害の両方で採用されるべきではない。」とCAFCは結論付けた。

(伊藤 英恵)

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