専門委員会成果物

独立して所有および運営しているディーラーは裁判地適否における「通常の確立された事業所」ではないと判断した事例

CAFC判決 2022年3月9日
In re:Volkswagen Group of America, Inc.

[経緯]

 StratosAudio, Inc.(S社)は,Volkswagen Group of America, Inc.(V社)及びHyundai Motor America(H社)に対して,保有米国特許を用いて,テキサス州西部連邦地裁(地裁)に侵害訴訟を提訴した。
 V社及びH社は,裁判地が不適切として,訴訟の却下または裁判地の移転を地裁に申し立てた。地裁は,テキサス州西部で,V社およびH社が独立して所有および運営しているディーラー(代理店)が,28 U.S.C. §1400(b)の「通常の確立された事業所」であると認定し,V社及びH社の上記申し立てを却下した。
 V社およびH社は,上記ディーラーが「通常の確立された事業所」に該当しないとの主張を行い,CAFCに控訴した。  

[CAFCの判断]

 CAFCは,V社及びH社の主張を認め,地裁に判決を差し戻した。
CAFCは,In re Google LLC, 949 F.3d 1338(Fed. Cir. 2020)の判決から,「通常の確立された事業所」と認定されるための代理店関係では当事者が代理人の行動を指揮または管理する権利を有する必要があるとした。具体的には当事者が代理人の業務を「暫定的に管理する」権利を有する必要があるとした。たとえば,車を販売する際には従うべきステップバイステップの指示や日々の業務を管理する義務が必要である。また,「特定のツールを使用して車両の保証作業を実行する」という指示だけでは不十分であり,保証作業がどのように実行されているか管理する義務が必要である。本事例のフランチャイズ契約の条項には上記のように代理人を暫定的に管理することが記載されておらず,V社及びH社と各ディーラーとの間に代理店関係を確立するには不十分であると判断した。CAFCは,上記の理由により,地裁の裁判地の判断は,準拠法を誤って解釈し,裁量の濫用であったとして,地裁に判決を差し戻した。

(北田 正人)

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