専門委員会成果物

「code」「application」「system」を含むクレームの構成要素はMPFに該当しないと判断した事例

CAFC判決　2022年３月24日
Dyfan, LLC v. Target Corporation

［経緯］

　Dyfan, LLC（Ｄ社）は，モバイル端末の位置情報に基づく情報配信に関する特許9,973,899とその継続出願による特許10,194,292（’292特許等）を保有しており，Target Corporation（Ｔ社）に対して特許侵害訴訟を提起した。
　地裁は，「code」や「application」という文言を含むクレームの構成要素がミーンズプラスファンクション形式（MPF）に該当するとして特許法112条第６パラグラフを適用した。さらに，これらの構成要素に対応する構造物としてのアルゴリズムが明細書で開示されていないため不明確と判断した。また，’292特許等の「system」クレームは，「code」という文言を使用した構成要素を含む複数の構成要素を記載しているが，「wherein」クローズで「the system is configured such that …」と総括的に処理を記載していたため，どの構成要素で当該処理を実行するのかが明示されておらず，十分な構造を有さない純粋に機能的な文言で記載されているとして，MPFに該当するとした。このようなクレーム解釈の下，地裁は，’292特許等について，クレームが不明確であるため無効と判決した。Ｄ社は，これを不服としてCAFCに控訴した。　

［CAFCの判断］

　CAFCは，以下の理由からＤ社の主張を認め，原判決を破棄して，事件をさらに審理させるべく地裁に差戻した。
　CAFCは，クレームの構成要素がMPFに該当するか否かの判断では，その構成要素が当業者に十分に明確な構造を示しているかどうかを判断する必要があるところ，地裁の判断は，Ｔ社自身の専門家による’292特許等のクレーム文言「code」「application」についての宣誓証言を無視したことに誤りがあると判断した。
　当該専門家による宣誓証言では，①文言「application」は当業者であれば特定の構造として理解したであろう用語であること，②文言「code」はソフトウェアの命令群であり，動作を説明する文言と組み合わされることで構造を意味するものと当業者に理解されること，が証言されていた。CAFCは，これらの証言から，’292特許等の「code」「application」を有する構成要素について「純粋に機能的な文言」を記載していないことが立証されている，と判断した。
　また，’292特許等の「system」クレームにおいて，「wherein」クローズの処理を実行する主体が「code」であることがクレーム全体の文脈から明確であり，「code」は当業者に十分に明確な構造を示す文言であることから，当該「system」はMPFに該当しない，とCAFCは判断した。

（平本　宏一）

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