専門委員会成果物

ドイツ特許庁分析:アーバンエアモビリティに関する特許出願が増加

 2021年12月29日,ドイツ特許商標庁(DPMA)は,エアタクシーなどアーバンエアモビリティに関するドイツにおける特許出願についての分析を発表した(1),(2)。  アーバンエアモビリティとは,都市の移動手段を空中に広げるという概念の乗り物である。DPMAは,アーバンエアモビリティに関して,ドイツでの権利化を求めてDPMAと欧州特許庁に出願された公開特許出願に基づいて分析を行った。
 DPMAの分析によれば,アーバンエアモビリティに関する特許出願活動は,過去5年間で急速に増加した。2016年には209件だった公開特許出願件数は,2020年では約3倍の583件に増加した。過去5年間では,合計で1,900件を超える出願が公開されており,10件のうち4件以上が米国の企業によるものである(42.2%)。米国は,ドイツ(16.5%),フランス(7.6%),中国(7.0%),日本(4.9%)の合計よりも出願件数で高いシェアを誇っている。
 ドイツ視点では,この1年の極めて高い出願活動を高く評価している。2020年には,ドイツの出願人による120件もの発明が公開されたが,これは前年の2倍以上であった(102.4%増)。他の国も前年に比べて大幅に多くの特許出願が公開されたが,米国からの出願数は前年の非常に高いレベルを維持した。
 また,DPMAはアーバンエアモビリティに関する特許出願の技術分野についても分析している。アーバンエアモビリティにおいて使用される航空機の多くは,マルチコプターと呼ばれる複数のローターを持つ垂直離陸型航空機である。このマルチコプターの開発で大きな課題となっているのが,垂直離着陸に大きな動力を必要とすることである。下向きのローターやプロペラで揚力を発生させるのは,巡航飛行であっても比較的大きなエネルギーを必要とする。そのため,特許出願の多くは,エネルギー供給・貯蔵システムに関するものであった。また,巡航飛行時に空力的な揚力を得るために翼を追加する設計に関する特許出願が顕著な傾向であることも明らかになった。さらに,エアタクシーと地上施設,例えば着陸場,空港ターミナルやサービスステーションとの相互作用を目的とした出願があった。
 DPMA長官のCornelia Rudloff-Schäfferは,「数年前までは,エアタクシーは多くの人にあまり真剣に受け止められていなかった。しかし,この技術分野に多額のベンチャーキャピタルが流れ込んでいることに加え,技術革新活動が急速に拡大していることから,この分野が将来的に重要な市場になることがわかる。」と述べている。また,「一見したところ,米国企業がアーバンエアモビリティにおいて圧倒的な役割を果たしているように見える。特許出願数で見ると,ドイツも新市場として適しているようだ。」と述べている。

注 記

  1. DPMAプレスリリース(2021年12月29日)
    https://www.dpma.de/english/services/public_relations/press_releases/20220105.html
  2. Infographics on Urban Air Mobility
    https://www.dpma.de/docs/presse/infografik_urbanairmobility.pdf

(参照日:2022年2月18日)    

(秋山 聡)

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