専門委員会成果物

EPO Tech Day 2022:持続可能なイノベーション技術の加速へ

 2月26日に開催されたTech Dayに約7,800人が参加した1)。Tech Dayとは,EPOにより年に1回開催されており,重要な技術テーマについて専門家と探索を行うことを目的としている2)。今回は,人類の健康と地球の健全を両立し,それを持続可能とするための技術開発を加速することをテーマとして議論された。
 EPO長官のAntónio Campinosは,Tech Dayの冒頭で,「持続可能性はとても困難な課題であるが,我々はこの課題を克服するための技術をサポートできる特許システムを保有している。温室効果ガス排出,リサイクルおよび他の持続可能とする目標を満たすことに貢献するだろう。」と語っている。
 今回のTech Dayでは,例えば,「地球温暖化に対するイノベーション技術の加速」について取り上げ,Breakthrough Energy社のPhilipp OffenbergとBen Gaddyは,スタートアップ企業に焦点を当てて,地球温暖化に対するイノベーションの加速について講演を行った。彼らは,欧州グリーンディールという欧州委員会が発表した気候変動対策を実現するためのイノベーションを支援する大胆な実行が即座に必要であることを強調した。そして,一流の発明家,アナリストおよび科学者は,今後の持続可能性の実現への見解とともに,現在の技術や方針について議論した。この議論の内容については,チーフエコノミストであるYann Ménièreが在籍するEPOと,エナジーテクノロジーアナリストのSimon Bennettが代表を務める国際エネルギー機関による共同研究に貢献した。
 最後のセッションでは,SDGs(Sustainable Development Goals)の達成に対してEPOがどのような取り組みを行っているかに焦点が当てられた。まず,EPOの広報担当であるLuis Berenguer Giménezが,持続可能なイノベーション技術分野に携わる30歳以下の発明者を表彰するEPO’s new Young Inventors Prizeについて紹介した。さらに,EPO副委員長であるNellie Simonが加わり,2030年までのカーボンニュートラルの目標達成に向けた,EPOの持続可能性への取り組みを強調した。また,特許付与プロセスの副委員長であるStephen Rowanは,中小企業がEPOのサービスをより利用しやすくする取り組みや,デジタルを利用して出願人との深いコミュニケーションおよび全ての人へ特許知識の提供のための取り組みを紹介した。最後に,国際法務副委員長のChristoph Ernstは,国際協力を推進し続けるためには,デジタル化がいかに重要であるかを強調した。
 Tech Dayの最後には,エキスパートおよびEPOの専門家が,電子廃棄物,グリーン水素,植物肉および次世代ワクチンなどの地球の健全性に向けた持続

注 記

  1. EPO Tech Day 2022:Accelerating sustainable innovation(2022年2月23日)
    https://www.epo.org/news-events/news/2022/20220223.html
  2. Tech Day 2022(2022年2月16日)
    https://www.epo.org/news-events/events/conferences/tech-day-2022.html

(参照日:2022年3月3日)  

(疋田 拓己)

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