国際活動

WIPO マドリッド作業部会(第15回)への委員派遣

  • スイス ジュネーブ市街
  • WIPO外観
  • 会議風景
  • JIPA出席メンバー

 2017/6/19-22、スイス・ジュネーブのWIPOにおいて第15回マドリッド作業部会が開催されました。このマドリッド作業部会は年に一度開催される国際会議で、マドリッド協定議定書や 同共通規則に関する課題の共有・規則改定等についての検討・議論が行われます。
 今回、マドリッド協定議定書加盟国のうちの55カ国及び非加盟国11カ国の政府代表団や、3国際機関及び9商標関連国際団体が会議に参加しました。日本からは、日本特許庁、 日本弁理士会、日本商標協会および日本知的財産協会(以下JIPA)が参加し、JIPAからは商標委員会の小林(シチズン時計:写真左)及び杉崎(武田薬品工業:写真右)、の2名を派遣しました。
 本年度は、「国内商標登録の国際商標登録による代替」、「国際商標出願及び事後指定における限定」、「国際商標出願の商品・役務分類に関する審査ガイドライン」及び 「商標同一性の基準・運用」が議題に挙がっていたため、これらの議題に対し日本企業ユーザーからの意見発信を行いました。
 JIPAから述べた意見の概要は次の通りです。
  1. 国内商標登録の国際商標登録による代替
     国際事務局より、代替に係る指定商品・役務の同一性の範囲、代替手続の管理、及び手数料の徴収・管理について提案がなされました。代替に係る指定商品・役務の範囲について、 現行の制度内で解釈及び運用を可能とするか、制度改正により国際的なハーモナイゼーションを目指すか、の意見があり合意には至らず、また、国際事務局による管理手数料の徴収にも 反対意見が相次いだので、来年の作業部会に持ち越しとなりました。JIPAからは、「代替制度自体のユーザー認知度が低いため、代替制度に係る各国での情報を一元化して公開して 欲しい。制度が認知されれば、商標ポートフォリオ構築時の選択肢として代替を考慮することができる」旨を発言しました。同様の趣旨の提案は欧州のユーザー団体Marquesからもあり、 共通するユーザーの要望として印象付けることができたのではないかと考えます。議論においては、締約国内で代替制度の利用が少なく、各国における優先順位が低いことも垣間見られました。
  2. 国際商標出願及び事後指定における限定
     国際事務局より、指定商品/役務の限定に関する審査の役割を明確化し、指定国に限定の審査権限を付与する提案がなされました。冒頭から国際商標出願に係る限定の審査は本国官庁が 行うべきという提案への反対意見が相次ぎ合意に至らず、来年度の作業部会にて継続審議となりました。JIPAからは、「指定国官庁での限定の審査が開始されることにより、審査の遅延と 拒絶対応の費用の増加が懸念される」旨を発言しました。
     来年の審議に向けて、今年度末に、JIPAを含む本作業部会への参加者全員に対してアンケート案が送付されるため、引き続きユーザー視点による提案をして参ります。
  3. 商標同一性の基準・運用
     マドリッドシステムによる国際商標出願では、本国の基礎出願・登録商標と国際商標出願の商標が同一であることが求められますが、締約国における当該商標同一性の基準・判断には 運用上差があり、日本では特に厳格に判断され同一と認められない実情がありました。そこで、ユーザーの利便性向上を求め、過去2回の本作業部会においてJIPAから商標同一性基準の 緩和を訴えた結果、本年度は国際事務局から締約国に対して、現状の商標同一性の判断基準・運用に関するアンケートが実施されました。
     アンケートの結果、一定数の締約国においてある程度柔軟性をもって商標の同一性を認めているケースが確認されたため、JIPAからは、「締約国官庁に対して実施したアンケート結果を元に、 国際事務局が既に一定の国で認められている柔軟性のあるケースを反映させたガイドラインを提示し、それに従って、締約国官庁の裁量にて柔軟性を認める同一性判断を行って欲しい。 また、一昨年、昨年と主張した、「英語とその音訳又は翻訳のカタカナ(ひらがな)の二段書き商標を基礎として、英語のみを国際出願商標とすることは、商標に対応関係があるとして 認めてほしい」旨を今年も発言しました。結果として本議題は、ラウンドテーブルの中期的課題として、継続審議されることが決定しました。
  4. 継続派遣の必要性
     来年度の作業部会本会議の議題は、代替、限定、新しいタイプの商標、トランスフォーメーションを予定しています。特に新しいタイプの商標についてはユーザーの関心も高いため、 JIPAから委員を継続派遣し、日本のユーザーの意見を引き続き表明して参ります。
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