国際活動

国際第2委員会:PCT-WG 12th Sessionへの委員派遣

  スイス・ジュネーブのWIPOにおいて、2019年6月11日から6月14日にかけて開催されたPCT作業部会(PCT-WG)に、JIPAより、今井周一郎国際第2委員長(栗田工業)、 郷家隆志国際第2委員(富士通)を派遣しました。
 このPCT-WGは、PCT総会に提案すべき議題を、加盟国の政府、国際機関代表、およびユーザ団体が一堂に会して事前に協議する国際会議で、2008年より開催され今年で12回目になります。
 今回のPCT-WGでは、例年通りPCT制度の将来の発展に向けた活動方針を中心に、現行制度が有する諸課題及びそれらへの取組に関する25の議題について、選任された議長 (オーストラリア特許庁Victor Portelli氏)の下、先進国・新興国・発展途上国、政府・国際機関・ユーザという制度に関わる全ての立場からの意見が聴取され、加盟国間での合意形成が図られました。
 JIPAは、PCT制度の適切な発展という視点から議論に参加し、以下の表明を致しました。
  1. 近年激しく議論が交わされていた新興国・発展途上国の特定の大学の費用減免については、他の出願人の費用負担増、国際調査の品質の低下などの不利益に繋がらない様に希望する。
  2. 出願人が任意の国際調査機関・予備審査機関(ISA/IPEA)を選択できる様にするという新たな提案については、ISA/IPEAの選択に関する出願人間の公平性に資するものであることをから賛同の 意を示す一方で、選択の自由化には各国のISA/IPEAの調査品質が一定以上となることが担保される必要がある。
  3. 現在パイロットが行われているPCT協働調査試行プログラムについては、ユーザが特段の関心を示していることに加えて、副担当庁の調査結果を主担当庁がどの様に判断したのかを 把握できる様になるとユーザの利便性に資すること、およびパイロットについて庁の方で順次解析しその結果の公表を希望する。
  4. 国際予備審査報告作成までの途中の補正書や答弁書等の書類の開示を行うという新たな提案については、国内段階に移行後、出願人にこれらの書類の翻訳文提出等の義務が発生 しない運用となることが望まれる。
  5. 昨年、JIPAを含むユーザがワークショップを行った「誤って提出された出願書類(Erroneously filed Parts and elements) 要素・部分の補充」については、昨年の議論の内容が 規則の改正案に盛り込まれていることに謝辞を述べつつ、出願人間の公平性のために、受理官庁間での運用を統一することや各国の特許庁での取り扱いが明確になることを期待する。

 PCT-WGでは、先進国と新興国・発展途上国のいずれかに有利な改正案に関する議題に対しては、激しく意見が交わされました。特に、新興国・発展途上国の大学に対する費用減免に関連する議題では、 激しい議論が行われ、セッションを複数日に渡って開催するなど意見の対立が一部でありました。また、誤って提出された要素・部分の補充に関する改正規則案についても何度も修正が繰り返されました。 しかしながら全体としては議長および副議長の素晴らしいチェアマンシップと各加盟国の建設的な姿勢により、PCT-WGは予定通りに全議題を議論して終了しました。

 次回のPCT-WGは2020年の同時期に開催され、今回の議題の詳細を継続して協議する予定となっています。JIPAは、PCT制度の適切な発展に向け、今後も、世界から期待されるユーザ団体としての 意見を表明していく予定です。

以上    

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