国際活動

WIPO マドリッド作業部会(第17回)への委員派遣

 2019年7月22日(月)から26日(金)に、スイス・ジュネーブのWIPOにおいて第17回マドリッド作業部会が開催されました。このマドリッド作業部会は年に一度開催される国際会議で、商標の国際登録制度に関するマドリッド協定議定書や同共通規則に関する課題の共有・規則改定等についての検討・議論が行われます。
 今回、マドリッド協定議定書加盟国のうち57カ国及び非加盟国6カ国の政府代表団や、3国際機関及び9商標関連国際団体が会議に参加しました。日本からは特許庁商標課及び国際意匠・ 商標出願室の担当者らが参加し、オブザーバーとして日本弁理士会、日本商標協会および日本知的財産協会(以下JIPA)が参加しました。JIPAからは商標委員会の杉崎副委員長 (武田薬品工業)及び齋藤(充)副委員長(SUBARU)の2名を派遣しました。
 本年度は、「国際登録による国内登録の代替」、「新しい商標及び新しい表現手段に関する調査結果」、「新しい商標等の取扱いに関する共通規則第9規則の修正可能性」、「暫定拒絶通報の応答期間、期間算出方法」、「従属期間の短縮可能性」、「新言語導入の可能性(中国語、ロシア語、アラビア語)」及び「国際登録の指定商品・役務の限定に 関する提案」が議題となり、いくつかの議題に対しJIPAから意見発信を行いました。
 JIPAから意見を述べた議題の概要は次の通りです。
  1. 国際登録による国内登録の代替
     当該制度は、締約国の国内登録を国際登録に置き換えることにより、各締約国に別個に存在する国内登録を国際登録で一元管理することを可能とする制度ですが、従来より締約国間で取扱いのばらつきが指摘され議論されており、今回、これまでの議論に基づき国際事務局より提案された共通規則案を検討しました。JIPAからは、ユーザー視点で支持する旨の基本姿勢を発言し、代替の原則の大部分は合意に至りました。マドリッド総会へ上程され、2021年2月から施行予定です。一方、合意に至らなかった一部代替(国内登録の商品・役務のうち一部しか国際登録に 含まれない場合)の取扱いについては、次回へ継続協議となりました。
  2. 暫定拒絶通報の応答期間、期間算出方法
     暫定拒絶通報への応答期間とその算出方法が、各締約国間で統一されていないことについて従来から指摘があり、引き続き議論がなされました。JIPAからは、「ユーザーにとって合理的な応答期間が設けられ、応答期間とその算出方法が各締約国で調和されることを期待する」旨を表明しました。
     次回の作業部会では、国際事務局が次回までに作成する以下の事項が盛り込まれた共通規則の修正案文に基づいて、議論がなされることとなりました。
    • 暫定拒絶通報への最小応答期限
    • 最少応答期限の各締約国間で調和された算出方法
    • 各締約国が国内法等を準備するため、修正条文の施行の延期可能性
    • 暫定拒絶通報に応答期日またはその算出方法を明示する厳格な要件
    • 国際事務局から出願人側への通知の送付を、原則として電子的通知とすること
  3. 従属期間の短縮可能性
     これまで数回の作業部会において、国際登録における基礎登録への従属期間を短縮させる可能性について検討しており、今回はそれらを総括した上、さらなる検討の方向性が 議論されました。JIPAからは、「従属期間の3年以内への短縮を要望し、これが日本のユーザーにとって、マドリッド制度の利用促進に繋がる」旨を発言しました。
     今後の議論の方向性として、以下の事項について国際事務局が次回作業部会までに準備をしたうえで、次回作業部会で検討を行うこととなりました。
    • 従属期間の5年から3年への短縮可能性のさらなる調査
    • 基礎登録が効力を失った理由に応じた従属の制限
    • 自動的な従属効果の除外可能性

 来年度に行われる次回作業部会の議題は、国際登録による国内登録の一部代替、新しい商標等の取扱いに関する共通規則第9規則の修正可能性、暫定拒絶に対する応答期間のハーモナイゼーション、 従属期間の短縮可能性、新手続言語導入の可能性、国際出願段階での指定商品・役務の限定を予定しています。特に、新しい商標や手続言語追加については、ユーザーの関心も高いと思いますので、 本作業部会にJIPAから委員を継続派遣し、日本のユーザーの意見を引き続き表明して参ります。

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  • JIPA出席メンバー(WIPO本部会議場)
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