「知財管理」誌

Vol.46 記事詳細

掲載巻(発行年) / 号 / 頁 46巻(1996年) / 11号 / 1739頁
論文区分 特集(マルチメディアを巡る法的諸問題)
論文名 ネットワーク・サービス・プロバイダーの責任
著者 吉田正夫
抄録 ネットワーク・サービスプロバイダーは、ネットワークにおける情報流通に関し様々なサービスの提供を行なっており、それに応じた果たすべき役割、注意義務も様々なものがあり得る。例えば、ユーザーが情報をアップロードした場合、ネットワーク・サービス・プロバイダーが複製、有線送信を行なったと評価される場合もある。基本的には、ネットワーク・わービス・プロバイダーの機能は通信、情報の流通、情報の作成の3種類に分けられよう。ネットワーク上に違法な情報が流通した時ネットワーク・サービス・プロバイダーはどのような責任を負うのか。通信に関るものはコンテンツにかかわっていないので、責任を問われる根拠がない。したがって、ネットワーク接続サービスを行なう時に関しては、責任を負わないことが多いと考えられる。情報流通にかかわるものは違法状態を知ったとき、知り得べきであったとき責任を問われるであろう。BBS運営者の多くはこの点から責任を負う可能性がある。また違法情報の作成に関るものは当然責任を問われることになる。ネットワークにおける情報流通による権利侵害の重大性のみを強調して、ネットワーク・サービス・プロバイダーに違法情報流通のすべてについて無過失責任を負わせるのは適当ではあるまい。しかしネットワークによる情報流通にかかわり、利益を上げるネットワーク・サービス・プロバイダーが情報流通に関し全く責任を負わないと言うことも不当であろう。ネットワーク・サービス・プロバイダーの事業を行うインセンティブを失わせず、またネットワーク上にコンテンツを流通させようと言う権利者のインセンティブを損なわないようにネットワーク・サービス・プロバイダーの責任を考えていく必要がある。情報流通と言う観点からは、他人の情報流通の仲介のみを行うのか、それだけにとどまらず、情報の創造・開発の全部又は一部に責任を持つものかが重要な判断要素になると考えられる。
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