「知財管理」誌

Vol.46 記事詳細

掲載巻(発行年) / 号 / 頁 46巻(1996年) / 1号 / 23頁
論文区分 論説
論文名 医薬品の臨床試験と特許法69条1項に規定される「試験又は研究」との関係
著者 清水尚人
抄録 一般に医薬品の臨床試験は、グリホサート事件のような農薬に関する判決例等から、特許法69条1項に規定される「試験又は研究」に当たらず、特許権を侵害する行為であると考えられている。しかし、一口に臨床試験といっても、世界で初めて行われる新有効成分を含有する医薬品の臨床試験から、いわゆるゾロ品に係る臨床試験(生物学的同等性試験)に至るまで種々のものがあるので、全ての臨床試験を同等に取り扱うことは問題であると思われる。著者は、一般に医薬品の本質が有効成分にあることを考慮して、少なくともヒトにおける有効性、安全性が未知な新有効成分を含有する医薬品の臨床試験は、当該発明の真の有用性を知ることが出来、医薬品分野の技術の進歩に直接貢献するものであると考えられるので、このような臨床試験であって、当該発明自体を対象をする臨床試験は、69条1項に規定される「試験又は研究」に当たると考える。そうでない場合には、原則として69条1項に規定される「試験又は研究」に当たらないと考える。薬事法に基づく医薬品の製造(輸入)のための承認(申請)は、当該臨床試験の結果であり、法律上の一規制(行政処分)にすぎないので、本問題における本質的な、ものではないと考える。
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