「知財管理」誌

Vol.46 記事詳細

掲載巻(発行年) / 号 / 頁 46巻(1996年) / 3号 / 403頁
論文区分 論説
論文名 プロドラッグによる特許権侵害についての若干の考察 (その3)
著者 仁木弘明
抄録 プロドラッグによる特許権侵害を物質特許・医薬特許発明の思想上の利用発明と捉え、侵害成立要件としての薬理上の代謝経路・作用機構の予測容易性及びその判断基準時点の問題を検討した。予測容易性の判断基準時点が出願時か侵害時であるかについては、医薬に関する発明は実験の科学、経験の科学という実証的側面の大きいことを前提において、特許発明が独創的な知見に基づく発明、それに準じたものと評価できるか、あるいは出願時点においてその周辺を公知技術や先願技術によって取り囲まれた改良発明であるかという実質的価値・寄与力等を測定し、他方、後発者である侵害者のプロドラッグに関する研究開発努力の程度等を秤量して、公正な権利者保護と第三者の妥当な法的安定の調和を図るとの衡平の理念に基づいて、個別具体的な事案に応じた価値判断の問題として侵害訴訟裁判所が認定すべきものと考える。また、その議論の前提として、自然法則と技術的思想の関係、均等論とり用発明論の関係、均等論と利用発明論の間での侵害の判断基準時点についての相違があるのか、その基準時点としての出願時説と侵害時説いかん、等の問題についても検討するものである。
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