「知財管理」誌

Vol.49 記事詳細

掲載巻(発行年) / 号 / 頁 49巻(1999年) / 4号 / 481頁
論文区分 論説
論文名 パラメータ発明の特許性判断
著者 特許委員会第2小委員会
抄録 近年、「パラメータ発明」の問題が、多くの技術分野において実務家の間で指摘されている。ここでいう「パラメータ発明」とは、例えば「出願人が自己の発明を表現するために創出した技術的変数(パラメータ)を規定した要件を含む発明」、あるいは「複数の変数を相関的に(必要なら式を用いて)規定した要件を含む発明」とされている。このうようなパラメータ発明は、技術分野によっても状況が異なるが、クレームクレームの記載要件を定めた特許法第36条が改正された平成7年6月30日以前の特許法(以下、「従来法」という)の下でも、散見されたクレームの記載様式である。パラメータ発明は、構造による特定が難しい技術内容を容易に表現できるため出願人にとって有利である。しかしその反面、第三者が実施する具体的事物、即ちイ号がそのクレーム範囲に属するか否かを確認するには、イ号がそのパラメータを具備するか否かを、改めて分析手段によって確認しなければならない場合が多い。そのため、特許されたパラメータ発明の技術的範囲を明細書の記載から直ちには判断し難く、第三者にとって厄介である。第三者にとってさらに大きな問題は、従来から実施していた具体的事物や公知技術が、パラメータ発明の技術的範囲に含まれて特許される場合があることである。その結果、パラメータ発明が特許される前には自由に実施できた技術が、突然他人の特許の侵害になるという事態が生じ得る。このうような場合、もちろん第三者には、特許の有効性を争う異議申立てや無効審判、あるいは先使用の抗弁という対抗手段が法的には与えられている。しかし、状況によっては特許権の行使を常に回避できるとは限らないし、決着に時間と費用がかかり企業活動に予想外の損失を被ることもあろう。請求項を発明の構成に欠くことができない事項のみによって記載すべきとしていた従来法に比べて、平成7年7月1日施行の改正特許法(以下、「改正法」という)では、クレーム記載の自由度が格段に広げられている。そのため、従来法においてすら見られたパラメータ発明の出願は、今後、従来にも増して多用されることが予想される。しかしその結果として、出願前の自由技術や他人の権利と錯綜する権利が多発することが懸念されている。そこで我々ワーキンググループでは、先ず便宜的に、パラメータ発明を「当該分野に慣用されていないパラメータ、または出願人が任意に創出したパラメータ(既知のパラメータを組合せた演算式を含む)によって特定された物の発明」と定義した。そして、従来法下の出願であってパラメータ発明と捉えることができる事例を抽出して、どのような審査がなされたかを調査した。次にこの調査結果から、第三者にとって特に問題となるパラメータ発明とは如何なるものかを明らかにしたうえで、問題となるパラメータ発明の、改正法下における特許性判断の在り方について検討した。今回の検討結果は必ずしも十分なものではないが、本稿が、パラメータ発明の問題を解決するための議論の端緒となれば幸いである。
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