「知財管理」誌

Vol.61 記事詳細

掲載巻(発行年) / 号 / 頁 61巻(2011年) / 5号 / 661頁
論文区分 判例研究(No.354)
論文名 No.354 退職後の競業行為に基づく不法行為の成立−サクセスほか(三佳テック)事件−
著者 石田 信平
抄録 労働者は、退職後の競業避止に関する特約や就業規則上の規定が存在しない場合には、基本的には自由に元使用者と競業関係に立つ活動を行うことができる。しかし、競業活動が社会通念上自由競争の範囲を逸脱したものである場合
には不法行為(民法709条)が成立し、労働者に損害賠償責任が生じる。これまでの下級審裁判例が判示してきたこの点を、本最高裁判決は改めて確認した。もっとも、本判決は、社会通念上自由競争の範囲を逸脱したか否かという点について、具体的な判断基準を示したわけではない。本判決は、個別具体的な状況から不法行為の成立を判断しており、不法行為成立の境界線に関する一事例を提供したものであるといえよう。ただ、本判決は、不法行為の成立を認めた控訴審判決を否定しており、退職した労働者の競業活動の自由を尊重する立場に立っているといえる。
<参照条文>民法709条 不正競争防止法2条
Copyright (C) Japan Intellectual Property Association All Rights Reserved.