「知財管理」誌

Vol.62 記事詳細

掲載巻(発行年) / 号 / 頁 62巻(2012年) / 8号 / 1177頁
論文区分 判例研究(続・No. 7)
論文名 (続・No. 7) 実施可能要件違反の認定判断の誤り
著者 眩卆男
抄録 この事件は、発明の名称を「電界放出デバイ
ス用炭素膜」とする特許出願(平成10年出願)
に関する拒絶査定不服審判の審決取消請求事件
であって、争点は、本願明細書の発明の詳細な
説明の記載が、平成6年改正後平成14年改正前
特許法(以下、単に「法」という。)36条4項
の「発明の詳細な説明は、通商産業省令で定め
るところにより、その発明の属する技術の分野
における通常の知識を有する者がその実施をす
ることができる程度に明確かつ十分に、記載し
なければならない。」という要件(実施可能要件)
を満たしているか否かという点にあった。
具体的には、本願明細書の発明の詳細な説明
に記載されている実施例において、本願発明の
炭素膜を製造するための諸条件(温度、圧力等)
のそれぞれの数値範囲が非常に広く、従来の炭
素膜を製造することができる数値まで含んでい
ることから、当業者が本願発明の炭素膜を製造
する方法を見出すまでに過度の試行錯誤が強い
られることを理由として実施可能要件違反と認
定判断した審決の妥当性が争点になった。
この争点について、判決は、「本願明細書…
の条件範囲は、製造可能なパラメータ範囲を列
挙したと捉えるべきで、当業者は具体的な製造条件決定に際しては、技術常識を加味して決定
すべきものである。」、「被告が主張するような
無数の試行錯誤があるわけではなく、当業者に
とって過度の試行錯誤とまではいえない。」と
判断し、審決を取消した。
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