「知財管理」誌

Vol.67 記事詳細

掲載巻(発行年) / 号 / 頁 67巻(2017年) / 9号 / 1323頁
論文区分 論説
論文名 知財高裁大合議判決覚書─オキサリプラチン事件をめぐって─
著者 篠原勝美
抄録  特許権の存続期間の延長登録の要件については、裁判所の判断が原動力となり、特許庁の実務が判例の立場と同一になっているが、延長登録を受けた特許権の効力範囲をめぐる裁判例はこれまでなかった。先発医薬品側と後発医薬品側の利害対立が顕著に現れる場面であり、後発医薬品(ジェネリック医薬品)のさらなる使用促進が国の大きな政策課題となっている現在、事実上、製薬業界における市場の適正な線引き作業という側面もみられる微妙かつ困難な問題である。知財高判平成29・1・20、1)(平成28年(ネ)第10046号、以下、単に「大合議判決」という)は、こうした状況下で、特許権侵害訴訟の初めてのケースにおいて、特許法68条の2の「政令で定める処分」(以下「承認」という)の対象となった(当該用途に使用される)物(以下「承認対象物」という)の実質同一について一定の解釈指針を提示した。判断基準の類型化の意義、効力範囲と登録要件の連動・非連動の問題、薬事行政と特許行政に及ぼす影響、法改正の課題等について概観し、今後の議論深化のための1つの視点を提供する。
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