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「ダウンロード違法化の対象範囲の見直し」に対する意見

                                                 2019年2月26日

                                                 一般社団法人 日本知的財産協会
                                                 次世代コンテンツ政策プロジェクト

 「ダウンロード違法化の対象範囲の見直し」に関する著作権法改正法案が、今国会に提出されんとしています。
当協会は、文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会「中間まとめ」に対する提出意見(以下)のとおり、国民への影響が極めて大きい見直しであることから、改正を行うとしても、 十分な議論を重ねて、慎重に行うべきであると考えています。

 この中間まとめに対しては当協会以外にも数多くの意見が提出され、その後も見直しの内容を懸念する、多数の有識者による緊急声明を はじめとした多くの意見2 が表明されていますが、 同小委員会は短期間の議論にとどまるなど、審議の過程でこれら意見を踏まえた十分な議論がなされたのか、疑問の残るところです。

 改正による影響の大きさに鑑み、これら多くの意見を踏まえたうえで、適切な立法がなされるよう、国会において慎重な議論が行われることを期待します。

  1. 「ダウンロード違法化の対象範囲の見直し」に関する緊急声明(呼びかけ人:高倉成男・中山信弘・金子敏哉、2019/2/19)
    http://www.kisc.meiji.ac.jp/~ip/_src/sc1464/20190219seimei.pdf
  2. ダウンロード違法化の全著作物拡大に対する懸念表明と提言(一般財団法人情報法制研究所 著作権と情報法制研究タスクフォース、2019/2/8)
    https://www.jilis.org/proposal/data/2019-02-08.pdf

    「ダウンロード違法化の対象範囲の見直し」に対する意見(アジアインターネット日本連盟、2019/2/21)
    http://aicj.jp/wp-content/uploads/2019/02/498e058cf9523f086c1d8a5a7149faea-1.pdf

    今国会に提出される著作権法改正 「リーチサイト規制」「ダウンロード違法化の対象範囲見直し」について(出版広報センター、2019/2/21)
    https://shuppankoho.jp/doc/20190221.pdf など

文化審議会著作権分科会 法制・基本問題小委員会「中間まとめ」に対する意見
〈「ダウンロード違法化の対象範囲の見直し」該当部分のみ抜粋〉

2018年12月28日
一般社団法人 日本知的財産協会
次世代コンテンツ政策プロジェクト

 今般の検討において立法事実として捉えられているのは、違法にアップロードされた出版物がダウンロードされることによって被害が生じていることであると理解される。 そうした被害への対策として、一定の範囲でダウンロードを違法化することには賛成する。インターネットユーザーによる私的なダウンロードであっても、それが権利者に与える影響は 甚大なものとなるし、侵害コンテンツと知りながら海賊版サイトから海賊版をダウンロードする利用者を、法30条によって保護するに値しないと考えられる。

 しかしながら、著作物の種類を区別する合理性はないとの理由で、全ての著作物を対象としてダウンロードの違法化を進めることについては、必ずしも議論が尽くされたとは 言い切れないことから、まずは喫緊の課題として被害実態が語られてきた侵害出版物に関するダウンロードを違法化し、それ以外について改めて慎重に検討を重ねた方がよいと考える。 これまで合法とされてきた私的複製のうち違法となる行為の対象を大きく拡大することのバランスとして、ダウンロードする者の主観要件によって違法となるケースを限定することを 想定しているようであるが、Webコンテンツの利用を念頭に置くと、消費者が思いがけず違法とされる懸念を払拭しきれないことからすると、対象著作物の範囲すなわち有償著作物への限定、 あるいは権利者の利益を不当に害する場合への限定など、違法とされる行為類型の限定の要否について、より一層検討されることが望ましい。また、過去の違法な録音・録画に係る刑事罰の導入に際して、 有識者や各利害関係者による議論が十分に行われたのかどうかが不明であることや、刑事罰導入後の著作物の提供形態の変化を踏まえると、既存の刑事罰規定を当然の前提とするのではなく、 上記の検討に併せて、例えば有償要件について「営利性」に修正するとどのような影響が生ずるかといった点も含めて、見直しの検討が必要ではないかと考える。

 また、対象物が侵害著作物であると考えた権利者が、後日の裁判手続等に備えて対象物を含む第三者の静止画・テキスト等のコンテンツを証拠として保全する目的でダウンロードすることも 考えられるところ、結果的に裁判手続を行わなかった等の理由により、万が一そのような行為が違法とされるようなことになれば、かえって権利者の利益を損ねることにもなりかねない。

 ダウンロード違法化の対象拡大が想定外の影響をもたらすことのないよう、脚注56に挙げられている研究目的のダウンロード以外の利用態様についても、法第30条第1項以外の既存の権利制限規定を 柔軟に解釈することによる救済や新たな権利制限規定の創設等を緻密に検討すべきである。

(⇒意見全文 http://www.jipa.or.jp/jyohou_hasin/teigen_iken/18/181228_jisedai_pj_2.pdf

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