国際活動

三極特許庁・ユーザ会合、三極ユーザ会合、EPC記念式典への参加報告

  2023年10月2日〜5日、ドイツ ミュンヘンのEPOにて開催された三極ユーザ会合(Industry Trilateral Meeting)、3極特許庁・ユーザ会合(Trilateral Meeting)に、JIPAから下川原理事長、国際政策WGの田中リーダー、宮下、大谷が参加しました。また、10月6日にEPC50周年記念の式典が開催(14日)され、JIPAからは下川原理事長が参加しました。
 準備会合(三極ユーザ会合)では、SDGs#4の教育への貢献に向けて、ユーザ団体として貢献できることについて、技術移転、若者の教育の観点で議論が行われました。
 また三極特許庁・ユーザ会合においては、SDGs#4に関する3極特許庁及びWIPOにおける取り組みについて紹介がなされるとともに、技術移転、若者への知財教育に関して、官民一体となって何ができるかについて参加者による議論がなされました。
 また、昨年の三極ユーザ会合で議論されたデジタル化、IP intensive industry reportについての進捗についての報告が各国特許庁より行われました。

1.三極ユーザ会合(10月2日〜3日、5日夕刻)

  1.  日米欧の三極ユーザ団体(JIPA、AIPLA、IPO、Business Europe)の代表者が集まり、三極特許庁・ユーザ会合に向けて、各国ユーザ団体からの意見や事例を集約し、三極ユーザのワンボイスとして発信するための調整会議を行いました。  JIPAからは、技術移転に関連して、WIPOグリーンの枠組みが参考になること、具体的事例として、ハイドロパネルを利用した飲料水の生成技術、地域見える化技術・生物種同定および生息適正予測に関する技術について紹介し、他国ユーザ団体から代表事例として取り上げることについて賛同を得ることができました。  また、若者への知財教育に関して、JIPAからは、日本企業の取り組み事例として、自社が保有する特許に関する技術を大学生に紹介し、その技術の活用方法を学生の視点で考えてもらうことで、新しいアイディアを創出し、その結果、ベンチャー創出に至った事例・製品化に至った事例の紹介を行いました。これらの紹介事例は、IPを利用した教育の好事例として、他のユーザ団体の賛同も得て、3極ユーザの合同提案に採用されました。
  2.  また、特許制度の実体的調和(SPLH)に関して、B+会合で報告されたコンサルテーションのレポートを踏まえ、新たに加わったBEメンバーを含めて三極ユーザ団体間で議論を行いました。  今後は、継続して特許制度の実体的調和に向けてどのように進めていくのかを検討する予定です。
  • 三極ユーザ会合の開催地(EPO外観)
  • 三極ユーザ会合の様子

2.三極特許庁・ユーザ会合(10月4日)

 日米欧の各特許庁およびWIPOと三極ユーザとにより、SDG#4に関する活発な意見交換が行われました。今回の会議は、主に以下のような議題について議事が進められました。
  • United Nations Sustainable Development Goal4:Qualiy Education
     EPOから近年、洪水、山火事などの天災が各地で起きており、持続可能な社会を教育で創るSDG4は野心的であること、パンデミックでリモートな地域もデジタル化が進み、技術インパクトを利用して知識の共有ができ、また、特許も情報として・貢献できること等について紹介がありました。
  • IT3 and Trilateral Offices’ perspectives on SDGs4 and voluntary technology Transfer
     EPOからは、全員が教育にアクセスできるようにしたいとの希望のもと、学習プログラム、認定プログラムについて紹介がありました。JPOからは、知財戦略デザイナーの大学派遣、e-ラーニング(IP ePlat)についての紹介がありました。USPTOからは、技術移転の重要性を確認しつつ、イニシアティブを使いインパクトを測定する必要があることなどの紹介がありました。さらに、WIPOからは、技術移転を含むイノベータ向けのオンラインサービスWIPO Inspire(Index of Specialized Patent Information Reports)、特許関連情報へのアクセス・分析・使用をサポートするTISCs(Technology Innovation Support Centers)について紹介がありました。
     一方、三極ユーザからは、技術移転に関して産業界も政府、庁に協力してきたこと、基礎研究の結果をもとに、スタートアップがアイディアを発展させ、大企業が商業化する流れの中で、特に商業化でリスクが大きく、現実的な期待値を持つ必要があることが説明されました。また、知財ライセンス契約のサンプル提供、Covid-19ワクチン生産に関するコラボレーション事例、WIPO Greenの技術移転事例などについても紹介されました。
     まとめとして、技術に焦点を当てていかなければならないこと、デジタル化によって門戸を開放し、民主化し、透明性を高めることが大切であることが確認されました。また、大学から沢山の特許が生まれており、大学からスピンオフ、スタートアップといった形で企業がでているのは米国であり、それを研究していきたいとEPOからのコメントが添えられました。
  • IT3 and Trilateral Offices’ perspectives on SDGs4 and youth-oriented initiatives
     EPOからWIPOと連携した現役大学生/卒業性向けの有給の研修、Young Inventors Prizeなどについての紹介が行われました。JPOからは知財を利用して社会課題に取り組むI-OPENのプロジェクト、知財開発支援事業、パテント/デザインコンテスト、若年層向けジュニアイノベーションなどの取り組みが紹介されました。 USPTOからは子供向けの1週間のIP教育、IP Champion、Master Teacherの取り組みが紹介されました。WIPOからは300以上のIPトレーニングコースを設けていること、Joint Master’s Programs ,IP Youth Ambassadorsなどが紹介されました。
     一方、ユーザ団体からIP Education Toolkit、Podcastを利用したIP教育、camp invention、特許出願ドラフトコンペ、ロースクールリンクプログラム、大学生へのIPを利用したアイディア創出事例についての紹介が行われました。
     全ての報告を受け、EPO長官から、特に米国プロボノ文化、企業の取り組みなどに学びがあったこと、欧州が遅れているため、報告内容を参考に対応していきたい旨のコメントがなされました。
  • Updates on digitalization effort at the Trilateral Offices and on the IP intensive industry report
    1. Digitalization
      EPOから、電子出願システムの近代化、検索システムの開発について紹介がありました。また、グローバルアサイメントに関して、ブロックチェーンが機能することについて今後紹介するとの報告がありました。また、JPOからは、デジタル化の進捗は予定通りで、ユーザ→特許庁の手続きは、2024年1月には全てデジタル化、特許庁→ユーザの手続きは、手続き毎に進めるとの報告がありました。なお、デジタル化にあたり、ユーザと定期的に意見交換を行い進めていることも報告されました。WIPOからは、庁と出願人とのデータ共有ができるとよいこと、異なる庁にも利用できる共通フォーム、カラー図面の重要性も認識しており、前進させる必要があることが述べられました。ユーザ団体からは、BEから作業の重複を無くす必要があること、産業界では、既存技術を使って我々のプロセスを改善していくことが重要であることが述べられました。
    2. IP intensive industry report
      EPOから、企業レベルでどのくらいのビジネスパフォーマンスが知財ででているかも調べていること、このレポートにより政策立案者が知財の複雑な状況を言及しやすくなったとのコメントがありました。JPOからは、大学研究者に協力依頼し、企業単位で売り上げ、株価、生産性を比較し、出願と事業パフォーマンスの相関をみることを進めており、来春には結果が公表されるとの報告がありました。
  • Outlook to the 2024 Trilateral meeting
    次回の三極特許庁・ユーザ会合は、日本で開催されることとなりました。開催地などの詳細は今後決定される予定です。JIPAの下川原理事長からユーザ団体を代表して次の会合でまた議論できることを楽しみにしているとのコメントがありました。
  • 三極特許庁・ユーザ会合 会場入り口
  • 三極特許庁・ユーザ会合 会議の様子

3.EPC50周年記念イベント

 10月5日に、EPC50周年式典も開催されました。参加者多数のため、JIPAからは理事長のみの参加となりましたが、ミュンヘン本会場と、ハーグ会場(オランダ国王出席)とウィーン会場(ブルガリア首相出席)とが繋がれ、インタラクティブに開催されました。
 式典の進行は、長官挨拶、来賓祝辞、コンテストに参加した子供達の表彰と続き、“Data”という名のAIバーチャルロボの質問(イノベーション・知財の歴史、SDGs関連など)に、EPO職員、発明アワード受賞経験者などが答える形で進み、〆のスピーチの後に、四極長官、JIPAを含む各ユーザ団体のビデオメッセージの一部が流されました。

●イベントの様子(EPO提供)
https://www.youtube.com/watch?v=QTTOZjHK9Jo

●同イベントに寄せたJIPAのビデオメッセージ
https://www.jipa.or.jp/katsudou/kokusai_katsudou/mp4/2023_JIPA_EPC_50years_Speech.mp4

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