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国際活動
WIPO・JIPA共催インダストリーラウンドテーブル開催報告
「無形資産投資による日本のイノベーションと経済成長の強化」
本イベントでは、WIPOおよびルイス・ビジネススクールが公表した最新の国際報告書を踏まえ、日本における無形資産投資の実態と今後の可能性について、国内外の専門家による多角的な議論が行われました。報告書によれば、2023年の日本の無形資産投資額は約5,970億ドルに達し、ドイツや英国を上回る水準となっています。また、日本においては研究開発(R&D)の比重が高い一方、組織資本への投資が相対的に少ないという構造的特徴も示されました。
冒頭では、WIPO知的財産・イノベーション・エコシステム部門のMarco Aleman事務局長補より、信頼性ある国際データとAIを含む最新の動向を反映した報告書の意義が紹介されました。続いて、内閣府中原裕彦知的財産戦略推進事務局長より、日本政府の「知的財産推進計画2025」が紹介され、無形資産の重要性が高まる背景として、のれん償却ルールの見直し、イノベーション拠点税制の施行、SNA(国民経済計算)の改定によるデータの固定資本化の動きが示されました。特許庁の河西康之長官からは、知財の活用や開示への注目の高まりを踏まえ、大企業における「知財経営」の進展と、中小企業支援のための「知財金融事業」の取り組みが紹介されました。JIPAの小林利彦理事長は、AIやソフトウェアの発展により無形資産の重要性が一層高まっていることを指摘し、今後は「知財と有形資産の両輪による成長戦略」が鍵になるとの見解を示しました。
プレゼンテーションセッションでは、ルイスビジネススクールのCecilia Jona-Lasinio教授、WIPOのSacha Wunsch-Vincent部長およびAnmol Kaur研究員から、無形資産投資の国際比較や日本における投資傾向が紹介されました。日本のアカデミアからは、経済産業研究所(RIETI)の深尾京司理事長と学習院大学の宮川努教授が登壇し、日本企業の無形資産を四半期ベースで評価する新たな取り組みについて報告がありました。また、日本の投資成長率が他の先進国と比較して低調である背景には、企業の慎重な投資姿勢があることも指摘されました。
続くパネルディスカッションでは、WIPOの夏目健一郎事務局長補がモデレーターを務め、JIPAの和泉恭子副理事長(富士通)、岡本貴洋副理事長(サントリー)、地曵慶一常務理事(貝印)が登壇。各業界における無形資産の活用実例が紹介されるとともに、日本政府が掲げる時価総額に占める無形資産比率50%超の目標、AIによる資産構造の変化、人材・組織投資の必要性、製造業のブランディング、グローバル展開におけるブランド・技術戦略など、多様な観点からの議論が行われました。
最後に、WIPO日本事務所の澤井智毅所長より、日本における無形資産投資のさらなる推進と知財制度理解の重要性が強調され、関係者への謝意が述べられました。JIPAの上野剛史専務理事からは、WIPOとの連携を一層深め、日本企業の無形資産活用と競争力向上に向けた支援を継続していく旨が表明され、閉会となりました。
ご挨拶(左から小林理事長、上野専務理事)
パネル(左から和泉副理事長、岡本副理事長、地曵常務理事)
