「知財管理」誌

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掲載巻(発行年) / 号 / 頁 75巻(2025年) / 9号 / 1150頁
論文区分 論説
論文名 AIが再現する「声」と知的財産法の課題
著者 今村哲也
抄録  生成AIを用いた音声合成技術の飛躍的進化により、本人が発していない音声をその人そっくりに合成できる時代となり、有名人のみならず一般人の声までもが容易に模倣・流用され得る状況が生じている。このようなAIによる音声生成技術は、便利さや創作の幅を広げる一方で、本人の許諾を得ない声の無断利用や、人格的・財産的利益を侵害するおそれがある。本稿は、音声配信サービスでの人気声優の無許諾音声利用、広告ビジネスにおける著名俳優の声の無断使用、ゲーム分野における故人の音声再現という具体的事例を想定した上で、著作権法上の実演家の権利、判例法上確立しているパブリシティ権の適用可能性、ならびに不正競争防止法による保護について、現行法の限界と課題を検討する。最後に、企業が実際に生成AIによる声の利用を行う際の実務的な留意点を提示し、生成AI時代に求められる知的財産法の新たな枠組みを示唆するものである。
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