「知財管理」誌

Vol.48 記事詳細

掲載巻(発行年) / 号 / 頁 48巻(1998年) / 6号 / 845頁
論文区分 論説
論文名 欧米日における選択発明の観点からの新規性に関する考察
著者 特許委員会第2小委員会
抄録 欧米日の新規性判断において引用発明となりうるための要件について検討を加えた。EPOにおける新規性を阻却させる開示の範囲の判断基準は、「明示的に記載された事項及び当事者が黙示的に理解できる事項から、直接的かつ一義的に導き出すことができるか否か」であり、米国においては、先行技術に開示された発明が、(イ)共通の性質を有すること、及び、(ロ)個々が「recognise」しうる小さな集合であること、という2つの要件を充足する場合に、新規性が阻却され、日本においては、当業者が、「把握」できるか否かにより、新規性が判断される。しかしながら、ドイツは、基本的には、上記EPOと同様の判断基準であるにもかかわらず、開示された範囲については具体的に記載されていないものについても、直接的かつ一義的に導き出すことができるものとして取扱う。特に、数値限定範囲については、全ての個々の値と中間範囲を公知として取扱うので、いわゆる選択発明の余地がない。筆者等は、日本における「把握」の解釈は、本来の新規性の意義、また、選択発明の余地を残す意味からも、更には、審査のハーモの観点からも、EPOと同様の判断基準で運用すべきであると考える。
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