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WIPO-SCP (Standing Committee of the Low of Patents) 21th sessionへの参加

 2014年11月3日〜7日、スイス・ジュネーブで開催されたWIPO第21回Standing Committee on the Law of Patents(SCP:特許法常設委員会)会合に、医薬バイオテクノロジー(以下、医薬バイオ)委員会の山西 了副委員長を派遣しました。 このSCPは、特許法の国際的な発展に関して、問題を議論したり、連携を進めたり、指針を与えたりするために、1998年に創設されたものです。年にほぼ1回開催され、世界各国の政府機関代表者、並びにオブザーバーとしてNGO等からの代表者が参加して行われます。JIPAは発言権をもつ公式オブザーバーです。以前には、SPLT (Substantive Patent Law Treaty)などが議論されていましたが、最近は「特許の質(Quality of patents, including opposition systems)」、「特許権の例外と制限 (Exceptions and limitations to patent rights)」、「特許と健康(Patents and health)」、「技術移転(Transfer of technology)」、及び「クライアントと特許アドバイザー間の秘密保持(Confidentiality of communications between clients and their patent advisors)」が主な議題となっています。「特許と健康」では、技術移転のために、特許明細書に製品情報が詳しく記載されるべきとの議論があり、医薬品の有効成分のINN(国際一般名称)の明細書への開示や、明細書にサポートされていない広いマーカッシュクレームの問題、公共の利益の目的での医薬品の強制実施権、医薬品の並行輸入等、医薬分野に関連する議題が多く取り上げられていることから、前回に引き続き、医薬バイオ委員会から派遣しました。

 第21回SCP会合では、「特許と健康」に関するFeasibility Studyの結果に関する議論が設定される等、公式会議のアジェンダも整ってきているという状況でした。このため、現実に起きている問題を産業界の立場から発言できる機会があるのではないかとの現地日本政府代表からの薦めもあり、医薬バイオ委員会として、日本製薬工業協会(製薬協)と連携して、WIPO-SCPのHPに公表される資料を事前に検討し、その結果を参加前に特許庁や現地の日本政府代表等に共有し、現地で状況をみながら、JIPAとしてステートメント(意見表明)を行う準備を行い、会議に参加致しました。

 第21回SCP会合は、比較的現実的な議論が展開されたため、JIPAのようなオブザーバーも参加できる時間が多く建設的な会合でした。現地では、オブザーバーであるIFPMA(国際製薬団体連合会)や日本政府代表団等と連携し、JIPAからも、「特許と健康」の議論の中で、ステートメントを行うことができました。その内容は、「日本の医薬バイオ関連企業は、所有する特許に対してライセンスオファーがあった際には、誠実に対応・交渉し、特許ライセンス供与または技術移転を行っていること、新薬を出すためにはR&Dへの投資が必要でそのため特許が必要であること、Neglected diseasesに対する日本企業の活動、WIPO Re:Searchへの参加とその内容が将来議論されることを期待すること、INNの明細書記載に反対したIFPMAへの支持を表明すること」を発表しました。

 今回は、事前に特許庁、製薬協等と協働しながら準備を行い、JIPAのステートメントに至ったことは、大きな成果でありました。一方で、今後のSCP会合の討議内容には、十分注視していく予定です。

[Update 2014-11-18 ]