3極特許庁長官・ユーザ会合、3極ユーザ会合等への参加報告

 日本にて数年ぶりの対面開催となった、3極特許庁長官・ユーザ会合(2024/10/13PM、14PM)、3極特許庁長官・ユーザ会合(10/14 AM)に、JIPA山中理事長、上野専務理事、国際政策WGの担当理事 若代副理事長、WGリーダ田中、メンバー宮下、大塚、加藤、池嶋、横山、鹿野、久慈が参加しました。  
 3極ユーザ会合では、3極特許庁長官・ユーザ会合での議題(①戦略トピック:知財インテリジェンス活動、②知的財産集約産業レポート、③庁内AI利用)を中心に、チェアとしてJIPAが事前に整理・検討した事項を紹介し、3極ユーザ団体としての集約意見としてまとめ上げる事前調整を行いました。  
 翌日の3極特許庁長官・ユーザ会合では、事前の3極ユーザ会合で合意が得られた事項を産業界の集約意見としてJIPAから力強く発信するとともに、各国ユーザ団体から補足的にコメントが述べられました。

  1. 3極ユーザ会合(10/13 PM)於.JIPA東京事務所
     日米欧の3極ユーザ団体(JIPA、AIPLA、IPO、Business Europe)の代表者が集まり、3極特許庁長官・ユーザ会合に向け、産業界としての意見の主役を行いました。  
     JIPAからは、情報活用委員会から要望のあった戦略トピック「知財インテリジェンス活動」 について、JIPAにおけるIPLの研究活動の変遷、無償・有償ツール、IPL用途、データソースを紹介し、ツール・データのまとめの公開を提案事項として紹介しました。他国ユーザ団体からはこの提案に賛同頂くとともに、更に、教育、イノベータによるIP利用をストーリで伝えることの重要性について追加のコメントを頂きました。
     また、欧米ユーザ団体から要望のあった議題としての「知的財産集約産業レポート」については、過去に知的財産集約産業レポートについてユーザ団体から行った提案内容を再確認するとともに、米ユーザから分析対象についての提案、欧州ユーザからレポート活用例について紹介があるとの意見を頂きました。
     3極ユーザ団体としても関心が高かった「庁内AI利用」の議題については、庁内AI利用技術のユーザへの開放の要望、既に提供されているAI利用サービスの周知に加えて、AIツールの透明性の懸念、各庁協力開発の必要性、先行技術調査でのAI利用と審査官教育状況やAI利用による効率改善効果を知りたいといった意見が他国ユーザ団体から寄せられました。
  2. 3極特許庁長官・ユーザ会合(10/14 AM)於.ホテル椿山荘東京
     今般の3極特許庁長官・ユーザ会合は、JPO小野長官とJIPA山中理事長による共同議長形式で椿山荘にて開催されました。主たる議題は以下のとおり:
    1. 昨年度の3極会合からのアップデート紹介(EPO)
       最初の議題として、EPOから前回の3極会合からのアップデートについて簡単に紹介がありました。
    2. 戦略トピック「知財インテリジェンス活動」
       3極特許庁及びWIPOからは、DeepTech finderなど提供している(EPO)、スタートアップ・大学に知財専門家を派遣する支援をしている。GXTI公表により分析を支援している(JPO)、virtual assistanceで出願をAI支援している、IPをサイバー攻撃から守るためのプログラムも提供している。(USPTO)。中小企業向けツールを提供している(WIPO)。ビジネスについてストーリを語れることが大事(JPO)といった紹介、メッセージが発信されました。
       これに対して、ユーザ団体からは、:事前調整した内容に基づいてJIPAから代表説明・提案を行うとともに、米欧の各ユーザ団体から補足的にコメントが述べられました。
    3. 知的財産集約産業レポート
       知的財産集約産業レポートに関しては、産業界を代表してJIPAから前回提案したユーザ要望を再度紹介するとともに、米欧ユーザ団体からレポートの活用状況など紹介がありました。
       一方、USPTOからは、知的財産集約産業レポートを来年度改定予定である旨の報告がありました。また、EPOから、同じ指標でなくとも3庁で、横並びで整理することも考えられるとのコメントが述べられました。
    4. 庁内AI利用
       まず、特許庁側から庁内でのAI利用について紹介がありました。具体的には、EPOは分類、先行技術調査、審査の一部でAIを活用している。JPOは分類、先行技術調査で活用、業務のAI利用も検討、外部有識者によるAI庁内研修を行っている。USPTOは分類、先行技術調査に利用している。WIPOはAI利用のガイダンスを職員向けに開催している。との紹介がありました。
       一方、産業界からは、ユーザへの利用開放、AI利用の透明性、AIによる効率改善状況の開示、審査官教育情報の提供を要望しました。
    なお、次回の3極特許庁長官・ユーザ会合は、USPTOがホスト庁として開催の予定です。
三極特許庁長官・ユーザ会合の様子 @椿山荘
  1. 3極ユーザ会合(10/14 PM)於.ホテル椿山荘東京  
     午後の会合では、午前の3極特許庁・ユーザ会合について簡単に振り返りを行うとともに、特許法の実体的調和(SPLH)について活発な議論を行いました。  
     SPLHに関しては、主に今後の議論の方向性について三極ユーザで話し合いました、また、衝突出願についてプロコンの議論を行い、JIPAからはIT3の提案でもあった実質同一の説明を行いました。欧州ユーザ(BE)より改めて検討経緯及びGP導入を前提とした調和提案の背景等の説明があり、質問等を経て、コンセンサスをはかるためのフレクシビリティや他方ポジションの検討可能性等の考えを出し合う等の話し合いが行われました。USサイドからも積極的に発言がありましたが、方向性を見出すことが難しく、最終的にBEからの提案を検討する発言を受け、日米ユーザで調和案を検討する方向で締めくくられました。

<その他> 
●サイドイベント「42nd Trilateral Conference International Symposium」(10/15)

3極特許庁長官・ユーザ会議のサイドイベントとして、”国際シンポジウム”がJPOの主催により東工大蔵前会館にて開催されました。本シンポジウムには、国外からEPO、USPTO、WIPO、そして3極ユーザ団体(BE、JIPA、IPO、AIPLA)の代表者が参加し、スタートアップを通じたアカデミア技術の社会実装、イノベーションエコシステムのための知財マネジメントについて活発な議論を行いました。

i) パネルディスカッション1:スタートアップを通じた学術研究機関による開発技術の社会実装

  • モデレータ:東京科学大学 飯田香織里副学長(産学官連携担当)
  • パネル:JPO小野長官、USPTO Vidal長官、東京大学医科学研究所 中内特任教授、BE Wainikka氏

 このデスカッションでは、知財と経営のシンクロ、技術移転促進のためのAUTM(米)、学術界と産業界はタンゴを踊れ(欧)、ライセンスオフィスが重要(学)、イノベーショには流動性・多様性が課題(日本で定年制の見直し、リスクとれる環境を)、幼児期から知財教育(米)といったキーワードとして語られました。

ii) パネルディスカッション2:イノベーションエコシステムのための知財マネージメント

  • モデレータ:東京科学大学 大嶋洋一副学長(産学官連携担当)
  • パネル:EPO Campinos長官,WIPO Jorgenson事務局次長、JIPA若代副理事長、AIPLA Anastasi氏、第1副会長,IPO Staudt前会長

 このディスカッションの前半では、「スタートアップの社会への影響」について議論され、スタートアップはエコシステムの中核。知財の理解と連携が経済成長に重要(WIPO)、単一特許制度の重要性と技術移転の課題(欧)、 企業は無形資産を出しながらスタートアップと共創したり、大学の共同研究で社会課題解決に貢献、SMEも社会課題解決の主体になり得る、IPは排他的からcocreationの時代へ(日)、スタートアップの人材不足と資源調達の支援が必要、大企業がスタートアップ支援し技術を育てる役割(米)といったことが語られました。  
 後半のディスカッションでは、「経済効果と知財の役割」について議論され、特許情報の提供と分析がイノベーション促進(WIPO)、特許のGDP影響とDBの重要性(欧)、①知財コンサルによる米国スタートアップ支援、 ②シンガポール大学と連携し特許資産のニーズ探索・事業化で社会課題解決、③発明者を特定し知財情報をインデックス化&開示することで繋がる(日)、スタートアップの知財戦略支援と商業化が重要、教育と啓蒙が必要(米)といったことが語られました。

国際シンポジウム@蔵前会館
若代副理事長